肛門から、直腸粘膜および直腸壁全層が脱出する病気で、
排便時の直腸粘膜の脱出が主な症状ですが、さらに進行すると、歩行時にも脱出が認められ、
診断は直腸脱を診て確認できれば容易ですが、脱出していない場合は、腹圧をかけると脱出を確認できます。詳しくは、原因になる脆弱な骨盤底と直腸の固定の異常の有無を調べる必要があります。
専門的には、腹圧時の
医学的には、アルテマイヤー分類(Ⅰ型:直腸粘膜の脱出、Ⅱ型:
鑑別診断としては、直腸がんの鑑別に大腸内視鏡検査が必要です。
小児の直腸脱は、なるべく手術せずに治療すべきです。便秘の予防(
成人では、外科的治療法が最もよいと思われます。開腹して直腸後方および側方を遊離して固定する直腸つりあげ固定術が有効です。いろいろな方法がありますが、どれも約90%は有効です。
手術は高齢者でも比較的安全ですが、麻酔による危険性の高い高齢者に対しては、有効率は下がりますが、
さらに、これでも軽快しない場合は、肛門から器具を入れて直腸を切断するアルテマイヤー手術や、開腹して直腸が脱出しないように骨盤内に固定するさまざまな直腸つりあげ固定手術が考えられています。
しかし、再発率の少ない手術ほど生体を傷つけることが多く、手術による危険性が増すことになり、年齢とQOL(生活の質)にあった手術を選択するため、十分な検討が必要です。
直腸脱に気づいた場合、またはその疑いがある場合は、直腸脱の程度の判定がしにくいため、肛門科の医師か、大腸肛門病専門の病院を受診し、正しい診断をしてもらうことが大切です。専門医でないと正しい診断がつかずに治療方針も決定できないからです。
また、粘膜脱、
梅枝 覚
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
直腸壁が肛門(こうもん)の全周にわたって、粘膜層だけ、あるいは全層が肛門括約筋の下方へ滑脱する状態をいう。そのうち、粘膜および粘膜下組織だけが脱出するものを不完全直腸脱または直腸粘膜脱とよび、直腸の全層が脱出するものを完全直腸脱という。なお、類似疾患に脱肛があるが、脱出した粘膜ひだの方向が放射状になる脱肛に対し、直腸脱では輪状(環状)になるので容易に鑑別できる。
完全直腸脱の好発年齢は、幼小児期と成人期に分かれる。幼小児期の直腸脱は、低栄養児が咳(せき)や便秘などで肛門への負荷が重なった場合に生じやすく、そのほとんどが保存的療法で治る。成人型直腸脱は、骨盤底と肛門管諸筋の弛緩(しかん)などで生じ、脱出を繰り返すことにより肛門括約筋がさらに弛緩して直腸脱が進行する。その手術方法は多種多様であり、年齢や症状に応じて使い分けられる。
[竹馬 浩]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…前者は俗によくいわれる脱肛であって,第3度の内痔核が長年月の間に持続的に脱出したままになってしまい,内痔核の脱出とともに健康な部分の粘膜までが肛門外に脱出,露出している状態をいう。一方,真性脱肛は直腸粘膜脱あるいは直腸脱に属するもので,肛門括約筋の弛緩や骨盤底部の支持組織の弱化が基礎となって発生するものと考えられている。真性脱肛は少ない。…
…直腸は腸内容の貯留と便の排出をつかさどり,消化吸収は行わない。直腸には癌の発生(直腸癌)以外に直腸炎や直腸脱という疾患がある。
[直腸炎proctitis]
原因はわからないが,直腸の粘膜および粘膜の下層までを侵す非特異性の炎症である。…
※「直腸脱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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