デジタル大辞泉
「痔核」の意味・読み・例文・類語
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じ‐かくヂ‥【痔核】
- 〘 名詞 〙 肛門部や直腸下部の静脈がふくらんで、球状になった静脈瘤。慢性便秘、座業、長時間の立仕事、冷え、飲酒などが原因となる。肛門部の不快感、圧迫感、異物感があり、症状が進むと排便時に痛みや出血を伴う。いぼ痔。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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痔核(肛門部疾患)
(1)痔核(hemorrhoid)
定義・概念
肛門の閉鎖に役立つ肛門粘膜下部分が増大し出血や脱出するようになったもの.
日常生活における肛門に対するさまざまな負担,特に便秘時の強いいきみや硬い便の排出により多数の血管や動静脈瘤,平滑筋,結合織からなる肛門粘膜下部分の,うっ血や支持組織の弱体化によって生じる(Thomson,1975).
分類
歯状線より口側に発生する内痔核と,肛門側に生じる外痔核に大別される.
また,急性期として外痔核に血栓を形成した血栓性外痔核や,内外痔核内に血栓を多数形成し腫脹した嵌頓痔核がある(図8-5-39).
臨床症状
初期の症状は痛みを伴わない出血で,きれいな真っ赤な血が比較的多量にポタポタと,もしくは飛び散るように出る.程度が進むと痔核の脱出がみられる.
脱出は排便時に限ってみられ排便終了後は自然と還納していたものが,次第に用手還納(指で肛門内におさめる)を要するようになり,さらには立位,歩行時に脱出をみるようになる.
痔核の急性発作状態である血栓性外痔核や嵌頓痔核は病変部の腫脹と激しい痛みを伴う.
診断・鑑別診断
痔核組織はやわらかいため指診での診察は不可能で,二枚貝式もしくは筒型の肛門鏡を用いて診察を行う.
肛門外に脱出するという症状から直腸全層が肛門外に脱出する直腸脱との鑑別診断が必要となる.
治療
便通を整え肛門衛生に留意するなどの生活療法を基本とし坐薬,軟膏などの外用薬を用いた保存的療法が原則となる.
外用薬は,その成分によりステロイド含有,ビスマス系,その他のものに分類し使い分ける.ステロイド含有のものは痔核の急性期に,ビスマス系のものは出血する痔核に,その他の坐薬は長期投与時に使用する.
保存療法で効果のない出血を繰り返す痔核には硬化剤を用いた注射療法が,そして脱出する内痔核には特殊な器具を用いゴム輪で結紮する結紮療法などの外来処置が行われる場合もある.
手術は出血に対してほかの療法で効果がない場合と,脱出する外痔核を伴った内痔核で日常生活に支障をきたし患者が手術を希望する場合に適応となる.
脱出する痔核で外痔核が著明でない場合,2005年より新しい硬化剤,ALTA(aluminum potassium sulfate and tannic acid,硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸)を用いた注射療法が行われるようになった.[岩垂純一]
■文献
Parks AG: Pathogenesis and treatment of fistula-in-ano. Br Med J, 1: 463-469, 1961.
Schouten WR, Briel JW, et al: Ischaemic nature of anal fissure. Br J Surg, 83: 63-65, 1996.
Thomson WHF: The nature of hemorrhoids. Br J Surg, 62: 542-552, 1975.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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じかくいぼじ【痔核(いぼ痔) Hemorrhoids(Piles)】
◎30~40歳代に多くおこる
[どんな病気か]
直腸(ちょくちょう)の下部や肛門(こうもん)には、静脈が網目状になって存在しています(静脈叢(じょうみゃくそう))。立って歩き、仕事をする人間は、重力、腹圧がかかるために、この静脈がしだいに発育して太くなってきます。
静脈が太くなってくると、そこにうっ血(けつ)がおこり、腫(は)れ上がってきます。この状態が痔核ですが、いぼのように腫(は)れ上がってくるので、俗にいぼ痔とも呼ばれています。
重症になると、血栓性静脈炎(けっせんせいじょうみゃくえん)を合併することがあります。
30~40歳代に多くおこり、男女比は男性1.5対女性1の割合です。
[原因]
便秘(べんぴ)があると、便がかたくなり長時間いきむので、筋肉の緊張により静脈がうっ血しやすくなります。うっ血がくり返されると、腫れ上がって痔核となります。
とくに、妊娠した女性では、大きくなった子宮(しきゅう)が大腸(だいちょう)を圧迫するので便秘になりやすいうえに、子宮が骨盤(こつばん)内の静脈を圧迫するために、肛門近くの静脈がうっ血をおこしやすくなります。そのため、妊婦は痔核になることが多いのです。
そのほか、重いものを持ち運ぶ、長時間しゃがんだり立ったりしたままでいる、臀部(でんぶ)を冷やす、アルコールを多飲するといったことも、肛門内の静脈のうっ血をまねく大きな誘因となります。
また、頻繁(ひんぱん)に下痢(げり)をくり返すと、痔核が発生しやすいだけでなく、炎症をおこして症状を悪化させます。
そのほか、腹腔(ふくくう)内に大きな腫瘤(しゅりゅう)があったり、門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしん)(「門脈圧亢進症」)、ぜんそくなどによっても、静脈叢のうっ血がおこり、痔核の原因となります。
◎内痔核(ないじかく)と外痔核(がいじかく)とがある
[種類]
肛門の中央部には、粘液(ねんえき)を分泌(ぶんぴつ)する肛門腺(こうもんせん)が14~16個、輪を描くようにして並んでいて、この部分を歯状線(しじょうせん)といいます。
この歯状線よりも内側にできた痔核を内痔核、外側にできたものを外痔核といいます(図「内痔核と外痔核」)。まれに、歯状線のすぐ下に痔核ができることがあり、これを中間痔核(ちゅうかんじかく)と呼ぶこともあります。
また、内痔核が肛門の外に脱出して肛門内にもどらなくなることがあり、嵌頓痔核(かんとんじかく)(または急性血栓性内痔核脱出(きゅうせいけっせんせいないじかくだっしゅつ))といいます。
外痔核の場合は視診(ししん)で、内痔核は肛門鏡(こうもんきょう)を使って、容易に診察することができます。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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痔核
じかく
hemorrhoids
piles
直腸下端部と肛門(こうもん)管に生じた静脈瘤(りゅう)をいう。俗にいぼ痔とよばれる代表的な痔で、単に痔とよばれることもある。ヘモロイドの語源はギリシア語のhaimorrhoidesで、haima(血液)とrhoia(流出)とからなり、出血しそうな静脈の意である。パイルズの語源はラテン語のpilaで、球の意味をもつ。痔核はかならずしも出血を伴わないので、パイルズのほうが適当であるという説もある。
痔核はその発生部位により、内痔核、外痔核、中間痔核(または混合痔核)に分けられる。直腸と肛門皮膚の境界線を肛門歯状線とよぶが、それより口側(上方)にできる静脈瘤を内痔核、それより肛門側の肛門皮膚縁に生ずる静脈瘤を外痔核といい、内痔核と外痔核を同時に生じたものが中間痔核である。
一般に内痔核はその程度により、Ⅰ度(痔核はあるが肛門外へ脱出はしない状態)、Ⅱ度(脱出するが容易に還納されるもの)、Ⅲ度(脱出したままの状態)に分けられる。おもな症状は出血と脱出で、痛みがないのが特徴。出血は、ちり紙に付着する程度から、滴状、射出状までいろいろある。排便後または脱出痔核が肛門管に戻ると、括約筋の収縮によって止血される。原因としては、繰り返される排便時の努責(どせき)(息張ること)によるところが大きい。外痔核はこれに反し、急に激痛と腫(は)れを訴えるようになることが多い。これを痔核発作ともよび、この状態のものを血栓性外痔核という。血栓形成の原因は、静脈壁の破綻(はたん)によるといわれる。放置しても1週間程度で血腫(けっしゅ)自体は吸収されるが、あとに肛門皮垂(肛門皮膚がまくれてしわが寄った状態)を残す。この肛門皮垂のことも外痔核とよぶことがある。
治療は、痔核の程度によって異なる。脱出しても自然に還納する程度のものは保存的療法を行う。便通を調整して排便時の努責をなくし、適度な運動や日常的に肛門括約筋の収縮を繰り返すなどによって局所のうっ血を除去するほか、局所を清潔に保つようにする。これらは痔核の予防にも役だつ。痔核発作時には、局所の安静、保温を心がけ、局所には軟膏(なんこう)や坐薬(ざやく)を用いる。また、抗炎症剤や鎮痛剤などの内服薬も投与される。常時脱出したまま還納されない場合や、内科的治療を行っても脱出を繰り返す場合には外科的療法を行う。静脈瘤を生じた部分を結紮(けっさつ)して静脈瘤を切除する結紮切除術が行われるが、5%フェノール液などの硬化剤を痔核に注入する注射療法、輪ゴムによる結紮、電気凝固、液体窒素などによる凍結外科療法などの非観血的療法もある。
[竹馬 浩]
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痔核【じかく】
俗に疣痔(いぼじ)といわれ,直腸下部,肛門の粘膜下にある痔静脈叢(そう)の瘤(りゅう)状拡張を示す病気。体質,生活様式,食生活にも関係があるとされ,日本人では特に多いといわれる。便秘,妊娠,分娩(ぶんべん)などで局所の鬱血(うっけつ)をきたすことも原因とされる。おもな症状は排便時の出血で,排便後滴下したり噴出したりする。出血を繰り返すと貧血症状をきたす。また細菌感染を起こすと疼痛(とうつう)を生じ,ときには直腸下部が肛門外へ脱出嵌頓(かんとん)し耐えがたい苦痛を伴う。軽度のものでは便通の調節,温浴,座薬挿入で治るが,重度のものでは種類によって痔核結節結紮(けっさつ)法,硬化療法,凍結療法,外科手術を行う。
→関連項目痔|脱肛
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痔核
じかく
hemorrhoids; piles
痔疾の一つ。肛門と直腸の静脈叢がうっ血を続けて静脈瘤様に変化したもの。下直腸 (下痔) 静脈にできる外痔核,上直腸 (上痔) 静脈から発生して,直腸の下縁にできる内痔核,両者の中間にできる中間痔核に分けられるが,各型の合併していることが多い。自覚症状はないこともあるが,瘤化が進んだり,便秘などによって,かゆみや痛みを訴えるようになる場合が多い。外痔核は内痔核に比べて出血は少い。保存的治療法としては,食事,坐位を改善するほか,ことに肛門の洗浄が有効。発作時の疼痛には直接温湿布をする。脱肛があれば入浴時に整復する。坐薬のほかトランキライザの有効なことも多い。慢性化した場合は外科的に治療する。
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出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の痔核の言及
【痔】より
…西洋では,フランスの聖フィアクルSaint Fiacreが諸病とくに痔の守護聖人として有名で,ルイ14世も治癒祈願をしたといわれる。 痔には俗にいういぼ痔(痔核)hemorrhoids,piles,きれ痔(痔裂,裂肛)anal fissure,あな痔(痔瘻(じろう))anal fistulaなどが含まれるが,医学上これらはまったく別個の疾患である。また狭義には痔は痔核の同意語として用いられることが多いので,ここでは痔核について記述し,他の二つはそれぞれの項目にゆずる。…
【脱肛】より
…肛門脱ともいい,内痔核性と真性の2種類がある。前者は俗によくいわれる脱肛であって,第3度の内痔核が長年月の間に持続的に脱出したままになってしまい,内痔核の脱出とともに健康な部分の粘膜までが肛門外に脱出,露出している状態をいう。…
※「痔核」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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