育児様式(読み)いくじようしき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「育児様式」の意味・わかりやすい解説

育児様式
いくじようしき

子供の社会化を進める際に行う,各社会に特有な育児についての制度,形式,方法をいう。育児様式には,文化によってそれぞれ一定の型があり,乳幼児行動の諸側面 (授乳離乳排泄訓練,攻撃行動の統制など) は結局,それぞれの文化の育児様式を反映している。そして,これはまた後年の個人のパーソナリティにも影響を与える。こうしたパーソナリティに及ぼされる育児様式の影響をめぐって,精神分析学,心理学,人類学など各分野において多くの研究が試みられた。たとえば文化とパーソナリティというテーマでは,A.カーディナーは,文化を,社会の成員に共通なパーソナリティをつくりだす育児様式 (一次的制度) とその成員が示す種々の行動様式 (二次的制度) とに分け,その間に基本的パーソナリティ構造という概念をおくことで,文化とパーソナリティの統合を考えた (→心理人類学 ) 。 E.フロムによれば,育児様式はカーディナーのいうように直接子供の性格内容を決定するわけではなく,どのような性格が社会によって要求されるかを子供に伝える働きをするだけであるとした。また R.リントンは,育児様式を,子供に対する周囲のおとなの文化によって類型づけられた行動であると定義し,パーソナリティ形成に及ぼす文化の影響の一つとして重要視している。

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