仏像の胎(体)内空間に納入された小仏像。仏像に仏性を秘めるための構成と考えられており、俗に「腹籠(はらごも)りの像」などともいう。仏像胎内には、ほかに画像、鏡像、印仏(いんぶつ)、摺仏(しゅうぶつ)、願文、舎利(しゃり)、五輪塔などが納入される場合があり、これらは胎内文書(もんじょ)とか胎内納入品とよばれる。
胎内仏はそれを納めた外の像と同じ尊形であるもの(茨城県城里(しろさと)町薬師寺の木造薬師如来坐像(やくしにょらいざぞう)に納められた薬師如来の小金銅仏坐像など)が多いが、別の尊像の場合(奈良市伝香寺裸地蔵立像胎内の薬師如来坐像、十一面観音(かんのん)立像など)もある。また制作年代も、胎内仏のほうが古いこともある(法隆寺聖霊(しょうりょう)院聖徳太子像〈1121〉の胎内に奈良時代の銅造観音立像が発見されている)。大きさは丈六(じょうろく)像(座高約2.5メートル)の中に30~40センチメートルほどの像を入れる(法隆寺西円堂の乾漆薬師如来坐像内の小金銅仏)というように大小差が極端な例が多いが、胎内空間ぎりぎりの像の場合もあり、また数多くの小像を入れる例(浄瑠璃(じょうるり)寺馬頭観音立像胎内には70余体の馬頭観音小像などが納められている)もある。胎内仏は、寄木造(よせぎづくり)が発達して胎内空間がつくりやすくなった平安中期以降の像に、多くの例がみられる。また外面の像を拝するときに体内仏をともに拝めるよう安置されるのが普通であるが、ときには厨子(ずし)のように(鎌倉覚園寺(かくおんじ)の鞘阿弥陀(さやあみだ)像)考えられることもある。
[佐藤昭夫]
仏像の胎内に納置されている小仏像をいう。像(胎)内納入品の一種で,仏像のみ単独に奉籠される場合と,仏舎利塔や経典,願文などいろいろな品をあわせて奉籠される場合とがある。胎内仏の尊像は,これを納置する像と同じ尊像であることが多いが,まったく別種の尊像を納置する場合もある。法隆寺西円堂の乾漆造丈六薬師如来座像の胎内に薬師如来の小金銅仏が発見されており,いずれも奈良時代の作品ながら納置された時代は不明である。茨城県城里町の旧常北町薬師寺の木造薬師如来座像からは薬師如来座像の小金銅仏が発見されている。東京都府中市善明寺の鉄造阿弥陀如来座像には銅造阿弥陀立像が納置されていた。浄瑠璃寺の馬頭観音立像からは,57体もの馬頭観音小像と破損像の断片が発見されている。奈良薬師寺の薬師如来三尊の左脇侍からは誕生仏が,法隆寺聖霊院の聖徳太子像からは観音立像,奈良市伝香寺裸地蔵立像からは薬師如来座像,十一面観音立像などが発見されている。仏像の胎内に納入されている品々を類別すると,それらすべては仏法僧の三宝に帰するものであるが,胎内仏を奉籠するのもやはり仏宝に帰する意味かと考えられ,仏像に仏心をこもらしめるものといえよう。
執筆者:光森 正士
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