生物の無性生殖細胞である胞子の一種。遊走子嚢(のう)内に形成され、鞭毛(べんもう)がある。一般に細胞壁がなく、水中を遊泳し、適当な基物に達すると静止し、鞭毛を捨てるか吸収して細胞壁を生じ、発芽すると通常は新個体となる。鞭毛には尾型と羽型がある。尾型鞭毛は全長の大部分が細胞質の鞘(さや)で包まれ、先端部が突き出ている。緑藻類の遊走子の前端には等長の尾型鞭毛2本があり、変形菌類では前端に長短各1本1組があり、ツボカビ類では後端に1本がある。羽型鞭毛は細い付属糸多数が左右に列生し、これが遊走子の前端に1本あるのはサカゲツボカビ類である。褐色植物、および卵菌類とラビリンチュラ類の遊走子には、羽型鞭毛と尾型鞭毛各1本1組が前端か側面にある。鞭毛の付属糸は電子顕微鏡で見られる大きさのものであるため、遊走子の図ではしばしば省略される。遊走子が発芽して遊走子を生ずること(2回遊泳性、多回遊泳性)もあるほか、一次遊泳期と二次遊泳期では形態が異なる二形性もみられる。
[寺川博典]
藻類や菌類の胞子のうち,鞭毛をもって運動性のあるもの。運動性の有無だけによって不動胞子aplanosporeと区別されているが,生活環中に占める位置については両者の間に差はない。また,陸上植物の胞子は不動胞子という呼び方はしない。遊泳を続けたのち,適当な基質に達すると定着して発芽し,配偶体をつくる。粘菌では胞子が発芽して遊走子となり,分裂増殖してからアメーバ状になり,それらが合着して変形体となる。ヒビミドロでは遊走子に雌雄の差があり,一つの胞子囊中に,4本の鞭毛をもった4個の大遊走子をもつ場合と,2本または4本の鞭毛をもった32個の小遊走子をもつ場合とがある。藻類には,遊走子が配偶子とよく似た形態をもつものもあるが,大きさや鞭毛の数などで容易に区別のつくものもある。鞭毛の形態や位置は遊走子の場合も配偶子の場合も同じで,これは分類群によって一定している。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 藻類の世代交代には多くの型があるが,代表的な例を以下に述べる。緑藻植物のアオサでは,減数分裂を経て遊走子(鞭毛をもち,水中を泳ぐ胞子)をつくる複相の胞子体(無性世代)と,配偶子をつくる単相の配偶体(有性世代)が交代するが,両世代は同形同大である。褐藻植物のコンブの本体は複相の胞子体(無性世代)で,減数分裂を経て遊走子をつくる。…
…
[さまざまな胞子]
胞子には鞭毛をもった運動性の動胞子planosporeと,鞭毛をもたない非運動性の不動胞子aplanosporeがある。動胞子はふつう遊走子とよばれ,緑藻,褐藻,藻菌類などにみられる。藻類の遊走子はふつう眼点をもち走光性があり,藻菌類の遊走子は走化性がある。…
※「遊走子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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