腸チフスとパラチフス(読み)ちょうチフスとパラチフス(その他表記)Typhoid fever and Paratyphoid fever

六訂版 家庭医学大全科 「腸チフスとパラチフス」の解説

腸チフスとパラチフス
ちょうチフスとパラチフス
Typhoid fever and Paratyphoid fever
(食中毒)

どんな食中毒か

 チフス菌パラチフス菌によって起こる急性感染症です。感染はヒトに限って起こり、患者および保菌者の糞便と尿ならびにそれらで汚染された食品、水、手指が感染源となります。食物のうち、とくに牡蠣(かき)などの貝類の生食、豆腐、サラダなどが原因食となった例があります。

症状の現れ方

 典型的症状として、特異な熱型、比較的徐脈バラ疹(ピンク色の斑状丘疹)、脾腫(ひしゅ)脾臓がはれる)、便秘、時に下痢鼓腸(こちょう)(腸内にガスがたまり腹部がふくらむ)などを伴う全身性感染症です。回腸のパイエル板に特有な病変を生じ、第3病週ころに潰瘍形成による腸出血、腸穿孔(せんこう)が起こることがあります。

 重症例では、意識障害を起こし、死亡することもあります。現在は、抗菌薬が有効なので、重症例は少なくなってきています。発病3カ月後も排菌を認める例もあります。

検査と診断

 血液、便、尿からの菌の分離を行い、チフス菌であることを同定します。ウィダール反応は、顕著な抗体価の上昇がみられる場合にのみ診断の参考にすることができます。

治療の方法

 ニューキノロン系薬剤、セフェム系薬剤などが有効ですが、近年多剤耐性菌、とくにニューキノロン系薬剤に低感受性の菌の頻度が高くなってきて、治療に抵抗を示す例が出てきているので注意を要します。菌の感受性検査を行うことが重要です。

病気に気づいたらどうする

 アジアなどの流行地に旅行後、発熱を伴う場合にはチフスも疑われるので、医師診療を受け適切な治療をしてもらう必要があります。

予防のために

 予防として欧米では3種類のワクチン(加熱フェノール不活化ワクチン、Ty21a弱毒経口生ワクチン、Vi多糖体成分ワクチン)が承認されています。日本では未承認ですが、海外渡航センターなどで個人輸入として接種可能です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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