日本大百科全書(ニッポニカ) 「自動活字鋳造機」の意味・わかりやすい解説
自動活字鋳造機
じどうかつじちゅうぞうき
automatic type caster
perfect type caster
活字合金を溶融して活字を鋳造する機械。単に活字を1本1本鋳造する鋳造機と、鋳造、文選(ぶんせん)、植字を同時に行う鋳植機とがある。
活字鋳造機は1885年にアメリカのバースHenry Barthが初めて特許をとった。鋳造機は、活字合金を溶融して一定温度に保つ地金溶解釜(がま)、溶融した活字合金を鋳口に送り込むピストン、鋳口に取り付けた鋳型、できた活字を仕上げる仕上げ部からなっている。母型は鋳型の末端に取り付ける。鋳型は活字のボディ(字面(じづら)を支える台の部分)を決定する。鉛、スズ、アンチモンを成分とする活字合金を溶解釜で溶融し、所定の温度(条件により300~340℃)に保ちつつ鋳口から鋳型に送り込む。合金が固化して活字ができると、鋳型から活字を押し出し、贅片(ぜいへん)(活字のへその緒、鋳口の部分にできる)や鋳張(いば)り(鋳型の合わせ目などにできる薄いひれ状の突起)を取り除いて仕上げ、ケースに入れる。
鋳植機は活字の鋳造、文選、植字の三つの作業を、オペレーターが文字のキーを打つことにより自動的に操作する機械である。鋳植機には、1文字ずつ原稿に従って活字を鋳造していくモノタイプmonotypeと、1行ずつ鋳造するライノタイプlinotypeとがある。
モノタイプは、キーボードで打った文字の母型を母型庫から取り出し、鋳型に送って1字ずつ鋳造する。できた活字を1行ごとに整理し、インテル(行と行の間に入れる詰めもの)を挿入して版をつくる。手作業の打字と機械作業の鋳造とでは速度が違うので、能率を向上させるため、打字した文字をいったん磁気テープに記憶させ、このテープを鋳植機に取り付けて鋳造、組版をするのが普通である。欧文の場合は、語の長さや文字の幅が異なるので各行の長さをそろえにくく、そのため語間の空きを調節して行ぞろえを行うようになっている。ライノタイプはキーボードで打った母型を母型庫から取り出し、1行分をまとめて鋳造する方式である。ライノタイプは本来は商品名であるが、この方式のものに使われる。このほかの代表的なものにインタータイプintertypeがあるが、形状、性能などライノタイプとほとんど同一である。モノタイプには邦文用と欧文用とがあり、ライノタイプは欧文専用である。1950年代以降写真植字が普及し、また80年ごろよりコンピュータによる文字の製作が盛んとなって金属活字や活字鋳造機が用いられることはほとんどなくなった。
[平石文雄・山本隆太郎]