自然発生的に成立した村で、行政村に対していう。村は、日本はもとより世界的にも自然発生的に成立したものが多い。そして同一の氏神をもち、血縁的にも地縁的にも深い結び付きをもつ社会集団を形成している。冠婚葬祭をはじめとする日常生活の講、組(相互協力)、生産生活の結(ゆい)(相互労力提供)をはじめとして基本的な村落生活は、伝統的な相互扶助的結合によって運営されている。農業(とくに水田耕作)に不可欠な水利や肥料用下草(したくさ)や自給用小器具材の用立てに発した入会(いりあい)地の利用についても伝統的慣行がよく守られている。江戸時代には自然村をもとに行政が行われていたが、1889年(明治22)施行の市町村制は数個の自然村が合併して成立した。その結果、自然村は現在の大字(おおあざ)にほぼ相当する。近年圃場(ほじょう)や水利施設の整備、農業の機械化・化学化、農業者の兼業化、村内の住宅地開発などに伴って農村は近代化され、自然村の伝統的慣行もいくらか変貌(へんぼう)をみつつある。
[浅香幸雄]
『田辺寿利編『都市と村落』(1948・国立書院)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…村落共同体秩序をもとに形成されている村落を〈自然村〉というのに対し,公権力により創出された行政単位としての町村を〈行政村〉という。江戸幕藩体制下において自然村は,年貢の収奪単位として村役人(名主または庄屋・組頭)の配された行政単位であり,かつ村民の生活共同体であった。…
※「自然村」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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