行政村(読み)ぎょうせいそん

精選版 日本国語大辞典 「行政村」の意味・読み・例文・類語

ぎょうせい‐そんギャウセイ‥【行政村】

  1. 〘 名詞 〙 近代化された行政単位として成立した村。明治期の市町村制に伴い、明治二二年(一八八九)に制定された。→自然村

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改訂新版 世界大百科事典 「行政村」の意味・わかりやすい解説

行政村 (ぎょうせいそん)

村落共同体秩序をもとに形成されている村落を〈自然村〉というのに対し,公権力により創出された行政単位としての町村を〈行政村〉という。江戸幕藩体制下において自然村は,年貢の収奪単位として村役人名主または庄屋・組頭)の配された行政単位であり,かつ村民の生活共同体であった。明治維新から1889年の町村制施行までの間に,これら旧村は強力な合併政策を通じて新たな行政単位に作り変えられた。明治政府は,1872年(明治5),末端行政区画として大区・小区制を採用し,戸長を配して戸籍制度による人民掌握にあたった。大区・小区は旧村を包括するものであり,この下で旧村の合併が進んだ。78年,大区・小区制の不評により郡区町村編制法が施行され,町村の区画旧慣に復すとされたが,84年の戸長管区制(戸長)の採用により平均5町村,500戸を基準に行政区画として戸長管区がひかれ,これをもとに89年の町村制施行時に7万余の町村は1万3000余に再編された。ところで,この行政村の創出とその内部における生活共同体たる自然村の存続こそ,明治地方自治制度の特徴である。政治的には,行政村と自然村を制度的に分離することにより,一般村民の関心村政から引き離し,かつ旧村の有力者(地主層)を行政村の理事者に加えることにより,国家統治体制に組み入れそれを強化したのである。また,行財政的には町村長に国政事務を委任し,費用の強制徴収体制が形成された。
市町村合併
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「行政村」の意味・わかりやすい解説

行政村
ぎょうせいそん

人為的に制定された地域に成立している村をいい、行政上の効率を増進するため、旧村よりもより広い地域を設定して、それを行政上の単位として成立している。自然村に対する用語。日本では1888年(明治21)に町村制が市制とともに制定され、89年から施行された。旧来の村(現在の大字(おおあざ))はそれぞれ古い歴史をもった村落共同体で、耕地を基盤とし、同一の神社を中心として、地縁者、血縁者で結合された自然村であった。それが明治維新後、大区・小区制(1872)や郡区町村編制法(1878)などによって行政区域が幾変遷したが、町村制施行(1889)にあたって自然村が数個合併し、住民の自治によって行政を進める新しい村が生まれた。その後、個別的に町村間に合併が行われることがあったが、第二次世界大戦後、政府の方針で1954年(昭和29)を中心として全国的に町村合併が促進され、行政地域の広域化が図られ、いま行政村数は著しく減少している。こうして行政村成立後は、村行政は町村制によって行われることとなり、ことに明治の町村制後は、以前から続いてきた自然村に比べて、行政面をはじめとして変容した部分が少なくない。しかし、神社の祭礼の日取りや村内の諸費用醵出(きょしゅつ)などについては、自然村ごとの伝統方式で決められ、近年普及している地区公民館も旧村ごとに設けられる場合が少なくない。

[浅香幸雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「行政村」の意味・わかりやすい解説

行政村
ぎょうせいそん
administrative village

行政上の目的によって区画された地方公共団体の一つ。 1888年の町村制施行により,「むら」と呼ばれた藩政期の村を数個含んで合併成立した。共同体的な集落単位であった部落 (むら) に対して特に行政村 (そん) と呼ばれた人為的な区画ではあるが,学校教育や郵便,戸籍など共通の問題処理の必要もあり,共通の税制,条例などをもつ政治行政単位として重要性をもってきた。

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