改訂新版 世界大百科事典 「自然歩道」の意味・わかりやすい解説
自然歩道 (しぜんほどう)
nature trail
自然遊歩道ともいう。多くの人々が四季を通じて手軽に,楽しくかつ安全に国土のすぐれた風景地等を歩くことにより,沿線の豊かな自然,歴史,文化にふれ,国土を再認識し,あわせて国民の健全な心身を育成し,自然保護思想の高揚に資することを目的として整備されている歩道。しかし,国立公園のように自然公園法などの法律によって整備されているものではなく,環境庁の関係する〈長距離自然歩道〉と都道府県が独自に整備する自然歩道の2種がある。東海自然歩道,九州自然歩道,中国自然歩道などの長距離自然歩道は,起・終点やルート等を環境庁長官が決定し,その整備は関係都道府県が環境庁の補助を受けて実施する。その補助率は国立公園・国定公園内が2分の1,その他の地域が3分の1である。この歩道の管理・運営は関係都道府県が所要経費を確保し,案内板,標識,ベンチ,歩道等の補修,草刈り,清掃等を実施している。東海自然歩道の構想は,厚生省が1968年12月に発表したが,その目的は東京から大阪までのメガロポリスの背後に,都市住民のレクリエーションの場として老人でも子どもでも歩くことのできる道を整備することにあった。すでに明治百年記念事業として,東京では明治の森高尾国定公園,大阪では明治の森箕面国定公園が設置されており,それぞれ歩道(研究路)があった。これを起・終点として,1都2府8県を通る〈東海自然歩道〉が73年度までに整備された。この歩道は枝線や複線となっているところを含めると路線の延長は,1697kmである。このほか81年3月までに九州自然歩道(2587km),83年3月までに中国自然歩道(2072km),89年までに四国自然歩道(1637km)と首都圏自然歩道(1665km),96年までに東北自然歩道(4374km)が整備された。(表)
外国ではアメリカ合衆国のアパラチア自然歩道Appalachian Trail(メーン州からジョージア州まで。総延長約3200km),パシフィック・クレスト自然歩道Pacific Crest Trail(カナダ・メキシコ両国境間。約3760km)が有名である。
執筆者:白坂 蕃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報