(1)ギリシアのペロポネソス半島中央部にある古代都市遺跡。現在のメガロポリスMegalópolisの北方約1.8kmにある。スパルタに対抗するため,テーバイの将軍エパメイノンダスとアルカディアの住民が協力して,前368-前367年に〈アルカディア同盟〉の首都として建設し,40の都市や町が植民に参加した。メガロポリスはテーバイやマケドニアと同盟関係にあり,後には〈アカイア同盟〉に加わった。たびたびスパルタの攻撃を受け,前223年にはクレオメネス3世により破壊された。その後復興し,ローマ帝政初期まで栄えたが,パウサニアスの時代(2世紀)にはほとんど廃墟となっていた。
メガロポリスは〈大きな都市〉の意味で,その名のように市壁の延長は約8.8kmにのぼる。市域はヘリッソン川により南北に二分されている。アゴラ(広場)は北部にあり,ゼウスの神域,大女神の神域,市政府の事務所,ギュムナシオン,〈フィリペイオスのストア〉〈アリスタンドリアのストア〉〈ミロポリス(香料店)のストア〉などによって囲まれていたと伝えられるが,遺構の保存状態はあまりよくない。発掘された〈フィリペイオスのストア〉はコの字形平面で,3列の列柱をもち長さ約155.4m,幅約19.8mあった。南部には,座席の一部が残っている劇場と,1万人の会議場テルシレイオンの遺跡がある。会議場は52.4m×66.6mの多柱広間で,中央の演壇が見やすいように放射状に配置された柱の礎石が残っている。
執筆者:堀内 清治(2)ゴットマンJ.Gottman(1915-94)が1957年にアメリカ合衆国北東部臨海地区の大都市圏の集合地域に与えた呼称。巨帯都市と訳される。その地域には北東から南西にボストン,ニューヨーク,フィラデルフィア,ボルティモア,ワシントンと大都市が並ぶ。それらの都市間は主要なハイウェー沿いに住宅や工場からなる市街地がほとんど連続して連なり,その背後に近郊農業の農地や住宅・工場が分布し,大都市圏が重複している。すなわち,多核的な都市化地域で,都市部と農村部の境界が不明瞭な星雲状の構造をもち,一群の港湾,商業中心,工業活動が最近50年間に形成されたところである。国家の政治・経済上の中枢機能をもち,社会的文化的中心でもある。それぞれの都市は独立していながら機能的に相互補完性をもち,超大都市システムを形成し,人間・物質・思想の高度の互換が見られ,大都市化の一つ先の段階を示していると思われる。
1976年にゴットマンは,上述のボストン~ワシントン間(`Bos-Wash’),シカゴ~ピッツバーグ間(`Chippits’),大阪~神戸間,イギリスの中軸地帯のロンドン~リバプール間(`axial belt’),北西ヨーロッパのフランクフルト~ボン~エッセン,ロッテルダムのラインラント・メガロポリス,上海都市群をあげ,近く,リオ・デ・ジャネイロ~サンパウロ複合地区,ミラノ~トリノ~ジェノバ三角地,サンフランシスコ~サン・ディエゴ間(`San-San’)がメガロポリスになろうと言った。日本では東京~神戸間を東海道メガロポリスと称しているが,疑問視する説もある。
ともかく,メガロポリスは人口集中・都市成長の過程のもっとも最近の段階を示すものである。
執筆者:田辺 健一
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巨帯都市ともいう。地理学者ゴットマンJ. Gottmann(1915―94)が1957年、アメリカ合衆国北東臨海部のボストンからニューヨーク、フィラデルフィアを経てワシントンに至る超大都市圏的な巨大な都市化地帯を全体としてこの名称でよんだことが始まりで、当初はこの地域のみの呼び名であった。やがて同様の巨大都市化地帯、すなわちいくつかの巨大都市圏を包含する連接的・多核的都市化地帯で、交通通信網によって密接に結ばれて機能的に一体化している地域、そして人口と経済力の集中によって国内経済の中枢となり、また国際的影響力をも発揮している地域を一般的にメガロポリスとよぶようになった。日本の首都圏から中京圏を経て阪神圏に至る東海道メガロポリス、ドイツ北部ルール地方からオランダ、ベルギーを経て北フランス・パリ地方に至るヨーロッパ・メガロポリス、ロンドンからバーミンガムを経てランカシャー地方に至るイギリス・メガロポリスなどがその例である。巨大都市(mega-polis,giant city)と混同されることがあるが、メガロポリスは前述のようにゴットマンの一種の造語であり、近代の大規模な都市化地帯を表す概念としてはこのほうが適切なものとして一般化した。なお、似た用語として古くからメトロポリスがあるが、これは一国または一地域の首都的、中心地的機能を有する都市というにとどまる。
[高野史男]
『J・ゴットマン著、木内信蔵・石水照雄訳『SD選書 メガロポリス』(1983・鹿島出版会)』▽『森川洋著『都市化と都市システム』(1990・大明堂)』
ギリシア南部、ペロポネソス半島中央部アルカディアの古代都市。紀元前370~前362年にテーベの将軍エパミノンダスが、スパルタに対抗するアルカディア同盟の中心として建設した。都市の名は「大きな都市」を意味する。全アルカディアの40の町や村から住民が移住した。前235年にアカイア同盟に加わり、同市出身のフィロポイメンは前210年ごろから同盟の主導者として活躍した。歴史家ポリビオスの出生地としても知られる。
[篠崎三男]
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ギリシアのアルカディア南部の交通の要地に,前366年頃テーベの援助のもとに新設された「大いなる町」。前3世紀後半アカイア同盟に加入し,有能な政治家が輩出した。史家ポリュビオスはその一人。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…その結果,中間の名古屋を含めてこの地域はちょうど一つの大都市圏のような姿に変わっていった。フランスの地理学者ゴットマンはアメリカのボストン~ニューヨーク~ワシントン間約1000kmの都市群をメガロポリス(巨帯都市)と名付けたが,それにならって,東海道沿線も東海道メガロポリスと呼ばれている。このように交通は地域の成長発展にとって,一つの重要な機能を分担している。…
…古い大都市周辺部の衛星都市がそれぞれ膨張して,市街地が連接するようになったことである。第3には,巨大都市といくつかの大都市がその都市圏を連接し,一つの共通都市圏を形成するにいたったメガロポリス(巨帯都市)の誕生である。アメリカ合衆国北東部のボストンからニューヨークを経てフィラデルフィアに至る地帯に名づけられた名称であるが,ライン・ルール,ロンドン・バーミンガム,シカゴ・シンシナティ,ロサンゼルス,東京・大阪などもメガロポリスの性格をもっているといわれるようになった。…
※「メガロポリス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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