自然独占(読み)シゼンドクセン(英語表記)natural monopoly

デジタル大辞泉 「自然独占」の意味・読み・例文・類語

しぜん‐どくせん【自然独占】

産業全体生産量複数企業で生産するより1社で生産した方が、全体の総費用が少なく効率的な場合、競争が成り立たず、独占状態になること。原因として、規模の経済性資源の希少性などがある。→地域独占費用逓減産業

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改訂新版 世界大百科事典 「自然独占」の意味・わかりやすい解説

自然独占 (しぜんどくせん)
natural monopoly

財貨・サービスの供給において,これを複数の企業が行うよりも一つの企業が行うほうが低費用で供給できるという事情があるとき,その市場で成立する売手独占をいう。自然独占は,単一の財貨・サービスを供給する場合において,供給規模増大に伴い供給費用が逓減するという〈規模の利益〉が著しい分野,あるいは複数の財貨・サービスを供給する場合において,その供給を複数の専業企業(一つの財貨・サービスをもっぱら供給するもの)が行うよりも一つの企業がそのすべてを供給することが低費用の供給を可能にするという,複数の財貨・サービス供給の費用上のメリットが著しい分野で成立する。鉄道電力ガス,電気通信等の分野では,一定の市場(地域)におけるサービスの供給は,私的独占企業あるいは公的(公有または公営)独占企業により行われているのが一般である。いずれの供給形態においても,独占を容認することによって一つの企業による供給の費用上の有利さを享受しており,また独占企業による独占的市場支配力の濫用を防止するため,その事業活動に関して政府規制あるいは監督が行われている。一般に自然独占に対する政府の規制は,当該分野への参入を規制する参入規制と,財貨・サービスの価格を規制する価格規制に大別できる。従来,自然独占といわれていた分野においても,需要構造の変化や技術革新等を背景とした市場条件の変化が顕著にみられる分野については,政府の規制のあり方に関して理論面および政策面からの再検討の機運が近年みられる。その基本的な方向は,これらの分野に競争原理を導入することによって効率的な財貨・サービスの供給を実現しようとするものであるといえよう。近年の日本における国鉄,電電公社に対する企業分割を含む経営形態の変更の方向での改革の動きも,その表れとみることができる。
独占
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世界大百科事典(旧版)内の自然独占の言及

【公企業】より

…第2は,公益事業の公共部門による運営である。郵便事業,電話,鉄道,船舶,航空,電気,ガス事業などは,規模の経済性が大きく,自由競争にゆだねれば市場は独占化するといわれる(自然独占)。独占の弊害から消費者を守るために,このような事業に対しては,民間企業が経営する場合にも料金形成やその他の経営面に公的介入が行われるが,公共部門がそれらを直接に経営する場合もあるのである。…

※「自然独占」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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