自転車泥棒(読み)じてんしゃどろぼう(その他表記)Ladri di biciclette

改訂新版 世界大百科事典 「自転車泥棒」の意味・わかりやすい解説

自転車泥棒 (じてんしゃどろぼう)
Ladri di biciclette

1948年製作のイタリア映画。〈日常性のネオレアリズモ〉を主張した脚本家チェーザレ・ザバッティーニとビットリオ・デ・シーカ監督コンビの最高傑作とうたわれる名作失業という終戦直後の社会的現実を反映したテーマ以上に,ひとりの男が盗まれた自転車を捜し求めて24時間の間都会の中をさまよい歩く姿をドキュメンタリーのようにとらえてみせたその〈リアリズム〉が,映画の〈物語性〉〈ドラマ性〉を剝奪することによって〈シネマトゥルギー〉を変革したといわれ,その後数え切れないほどの模倣作品を生んだという意味でも世界中にもっとも大きな影響を与え,戦後映画史を形成する最初のもっとも重要な作品となった。《靴みがき》(1947)に次いで2度目のアカデミー外国語映画賞を受賞して,デ・シーカ監督の名を不朽のものとした。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「自転車泥棒」の意味・わかりやすい解説

自転車泥棒
じてんしゃどろぼう
Ladri di Biciclette

イタリア映画。1948年作品。50年(昭和25)日本公開。初期ネオレアリズモの代表作で、監督ビットリオ・デ・シーカVittorio De Sica(1902―74)、脚本チェーザレ・ザバッティーニCesare Zavattini(1902―89)。自転車持参という条件付きで就職した失業労働者(ランベルト・マッジョラーニ)が、自転車を盗まれ、幼い息子(エンツォ・スタイオーラ)と2人でローマの街を歩き回って自転車を捜す。追い詰められ、他人の自転車を盗んだ父を、息子はただ見つめるばかりであった。デ・シーカは、非職業俳優を使い、セット主義を排し、第二次世界大戦後の荒廃したローマの街をさまよい歩く2人の姿を、ただひたすら描いた。そこから自然に流露する人間的感情は精緻(せいち)かつ豊かであり、現実の過酷さに押し流されそうになる人間の姿をやさしく表現した。

鳥山 拡]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自転車泥棒」の意味・わかりやすい解説

自転車泥棒
じてんしゃどろぼう
Ladri di Biciclette

イタリア映画。デ・シーカ・プロ 1948年作品。監督ビットリオ・デ・シーカ。脚本 C.ザバッティーニ。主演ランベルト・マッジョラーニ,エンツオ・スタイオーラ。広告ポスター張りの仕事にありついた男が,仕事中に自転車を盗まれてしまう。警察では相手にされず,息子と2人でやっと犯人を突止めたが,証拠がないため逆に危害を加えられる。絶望した父は他人の自転車を盗むが,すぐ見つかってしまう。やっと許された父と子は夕闇の街のなかに消えていく。荒廃した第2次世界大戦後のイタリア社会を背景に,しろうとの俳優を使い,オールロケによって作られたイタリア・ネオレアリズモ映画の代表作。

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デジタル大辞泉プラス 「自転車泥棒」の解説

自転車泥棒

1948年製作のイタリア映画。原題《Ladri di biciclette》。ビットリオ・デ・シーカ監督によるイタリアン・ネオリアリズモの傑作。監督:ビットリオ・デ・シーカ、出演:ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタヨーラほか。第22回米国アカデミー賞特別賞(外国語映画賞)受賞。第3回英国アカデミー賞作品賞受賞。

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