航空協定(読み)こうくうきょうてい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「航空協定」の意味・わかりやすい解説

航空協定
こうくうきょうてい

国際間における商業航空権についてのすべての取決めを含むが、通常は二国間協定(日米航空協定など)をさして用いられる。「空の自由」freedom of the airのうち、(1)上空通過の自由、(2)技術着陸の自由については、1944年シカゴ民間航空会議で採択された国際航空業務通過協定の加盟国相互で認められたが、(3)自国内で積み込んだ客貨を他国で下ろす自由、(4)他国で自国向けの客貨を積み込む自由、(5)相手国と第三国との間で客貨の積み込み・積み下ろしを行う自由、については多数国交渉ではまとまらず、結局、自国の航空機を乗り入れさせたい国相互による航空交渉を通じて、二国間協定を締結しなければならなくなった。1946年アメリカ合衆国とイギリスとの間にバーミューダ協定とよばれる航空協定が締結された。この協定は平等主義の原則にたち、機会均等、適正運賃、輸送需要に適応する輸送力などが保たれている限り、使用機材、便数は自由とするものであった。1990年代の航空規制緩和の動きのなかで、それぞれの国の方針によって程度は異なるが、基本的には二国間協定の枠組みの大枠は維持しながら、その運用にあたっては大幅に自由な運航と運送とを認めていこうとする国が多くなっている。また、このような動きを背景に、国際航空輸送形態が大きく変わろうとしている。アメリカの主要航空会社を核として、国境を越えての航空会社のグループ化が進み、その結果、これまでのように政府が前面に出て航空協定により輸送力、サービスの基本を定めていた状態から、グループ間の競争に変わりつつある。

 なお、多国間の国際航空協定条約としては、1929年締結の国際航空運送条約、1944年締結の国際民間航空条約、1945年発効の国際航空業務通過協定がある。また、国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO(イカオ))や航空運送業者の国際団体である国際航空運送協会IATA(イアタ))においても、運賃やサービスなどについて協議が行われる。

秋葉 明]

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改訂新版 世界大百科事典 「航空協定」の意味・わかりやすい解説

航空協定 (こうくうきょうてい)

運送の権利をともなう民間の商業航空を前提に,自国の航空機を乗り入れさせたい国に対し,それぞれの国が航空運送について締結する双務協定。通常,〈二国間航空業務協定Bilateral Air Service Agreement〉といわれる。協定に際しては,通常次の五つの自由が問題となる。〈空の五つの自由〉と呼ばれるもので,第1の自由はある国の航空機が他国の領域を無着陸で横断する自由。第2は他国の領域に給油等運輸以外の目的で着陸する自由。第3は自国で積んだ貨客・郵便物を他国で卸す自由。第4は他国の領域内で自国向けの貨客を積む自由。第5は他国と第三国との間の貨客の積卸しの自由,の五つがそれである。このうち第1と第2の自由は国際民間航空条約(シカゴ条約)の付属協定である〈国際業務通過協定〉により認められ,続く〈国際航空運送協定〉ではこの五つの自由の定義づけが行われた。

 国際定期航空輸送にとっては,第3以下の自由が多国間協定という形で与えられることが理想である。しかし,第2次大戦後のアメリカ優位の情況下では,機会均等の原則のもとでの航空業務の遂行は不可能であった。したがって,第3以下の自由を多国間条約で相互承認することは事実上あり得ず,その結果,定期国際航空業務の開設は当事国間,すなわち二国間の航空協定によらねばならなくなった。1946年英米両国間で結ばれた二国間航空協定は〈バミューダⅠ〉とよばれ,以後の二国間協定の雛形となった。日本が世界の各国と結んだ航空協定も,ほぼバミューダ方式に準拠している。ただ,76年に英米間で結ばれた改訂航空協定は〈バミューダⅡ〉といわれ,今後の二国間協定の見本とはならないともいわれている。

 二国間協定で協議決定されねばならぬ事項は,(1)どのような権利を,(2)どのような条件のもとに,(3)どのような手続で,(4)どの航空企業で,(5)どの程度の輸送力(便数)で,(6)どのような運賃で,(7)どの路線で,の7項目である。このうち,航空交渉で論議の的となり紛争を呼ぶのは(5)の便数,(6)の運賃決定方法,(7)の運営路線である。とくに便数と運営路線は二国間協定の付表に掲げられるもので,協定の締結交渉上最も重要かつ具体的な目的となっている。

 以上を五つの自由との関連でみると,路線権,以遠権,輸送力の三つに集約できる。路線権は主として第3,第4の自由に関連するもので,これは相互の国の地理的条件,国土の大小によっても左右される。以遠権は,主として第5の自由(三国間輸送)に関するものである。輸送力は便数であり,大国と小国間では特に不均衡が生じやすい。現在の日米航空協定が不平等といわれるのも,この路線権,以遠権,輸送力の3点についてである。いわゆる石油危機,また慢性化の傾向がみられる世界的な需要の低迷等の現状から,各国が二国間航空協定を武器に自己の既得権益の擁護を図ることは確実とみられ,それは空の完全自由化を唱えるアメリカといえども例外でない。したがって,二国間協定が多国間協定に移行する可能性,すなわち世界の空が完全に開放されることはほとんどあり得ないとみられている。
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百科事典マイペディア 「航空協定」の意味・わかりやすい解説

航空協定【こうくうきょうてい】

普通,民間航空の運送条件に関する2国間の取決めを指す。ヨーロッパやラテン・アメリカ諸国では多国間協定が締結されている。〈国際民間航空条約〉(1944年)に基づくもの。民間国際航空体制は個々の航空協定の集積によって成り立っているが,そのほとんどは1946年の英米間の協定(バミューダ協定。ただし1977年に新協定が成立)をモデルとしてきた。近年国際航空の自由化が促進されてきたことから新たなモデルが模索されはじめている。なお,1952年の日米航空協定は1976年以来日本側からの要求で改訂交渉が行われ,日米間の格差の是正がはかられてきている。→以遠権
→関連項目航空運送事業航空法

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