日本大百科全書(ニッポニカ) 「航路障害物」の意味・わかりやすい解説
航路障害物
こうろしょうがいぶつ
船舶の航行に支障をきたすような漂流物や漂着ごみ、工作物などのこと。ブイ(浮標)、流出した木材、漁網、養殖筏(いかだ)、漂流中のドラム缶など、さまざまなものがあり、なかには沈没したコンテナや漁船といった、すぐに除去するのはむずかしい障害物もある。このような海上や海中にある障害物は、海上保安庁の監督のもとに除去される。また、除去できない場合には、灯浮標が設置される。これは岩礁や浅瀬などの存在を船舶に知らせる航路標識の一つである。
2011年(平成23)の東日本大震災では、津波によって大量の物質が陸地から流出して障害物となった。一方、被災港湾は、緊急物資の輸送のために一刻も早く機能を回復させねばならず、早急に航路の状況を把握し、障害物を除去する必要があった。海上保安庁は震災翌日の3月12日、航路障害物調査のために音響測深機などの資機材を搭載した測量船5隻を東北地方へ派遣。3月15日には釜石港(岩手県)の一部供用再開を実現するなどの成果をあげた。環境省の推計によると、東日本大震災で海洋へ流出した災害廃棄物の総量(総量推計の時点は震災直後で、地理的範囲は岩手県、宮城県、福島県)は、およそ500万トンで、そのうち7割程度が海底に沈み、残りの3割(約150万トン)が漂流ごみになったとしている。
[編集部]