ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「岩手県」の解説
岩手〔県〕
いわて
人口 127万9594(2015)。
年降水量 1266.0 mm(盛岡市)。
年平均気温 10.2℃(盛岡市)。
県庁所在地 盛岡市。
県木 ナンブアカマツ(→アカマツ)。
県花 キリ。
県鳥 キジ。
東北地方の太平洋側にある県。北は青森県,西は秋田県,南は宮城県に接する。西に奥羽山脈と那須火山帯が,東に北上高地が紡錘状に横たわり,その間を北上川が南流して北上盆地を形成。海岸線は本州最東端(東経 142°4′21″)の重茂半島(おもえはんとう,宮古市)をもつ三陸海岸となり,その特異なリアス海岸は豊かな漁場であり,また三陸復興国立公園の景勝地でもある。しかしその一方で地震・津波の多いことでも知られ,2011年の東北地方太平洋沖地震では沿岸部を中心に大きな被害を受けた。内陸部では冬の寒さが厳しい大陸性気候であるが,太平洋岸では春から夏にかけて北東風が吹き,煙霧を伴う冷たい風(やませ)が内陸部にまで吹き込み,冷害の原因となることがある。古代の県域は蝦夷地と呼ばれ,坂上田村麻呂の蝦夷征討の拠点となり,藤原氏治世 100年の間,独特の平泉文化を築いた。中世は源頼朝の御家人によって分割支配され,盛衰,興亡を繰り返したが,江戸時代には盛岡藩と仙台藩によって二分された。明治4(1871)年廃藩置県で盛岡,江刺,一関などの県に分かれ,1876年今日の岩手県となる。第2次世界大戦後,北上川流域の総合開発によって工業地域を形成。1980年から始まった県総合開発計画により,これまでの釜石製鉄や大船渡のセメント工業に代表される原料立地型に対し,精密工業,電子工業,紙・パルプ,金属,化学などの労働力指向型の工業が誘致された。また,中小企業の集団化・団地化が進み,食品工業団地,木工団地,機械工業団地などが各地で操業している。鉱業面では鉄鉱をはじめ硫黄,マンガン,銅鉱などがあり,最盛期の 1950年代には約 150の鉱山が操業したが,全国的な経営不振から松尾鉱山,田老鉱山など相次いで閉山。農林水産業が大きな比重を占め,北上山系の大規模開発とともに米作と畜産を柱とした日本の食糧供給基地化を目指している。広大な県域は十和田八幡平国立公園,三陸復興国立公園,平泉町の中尊寺(2011世界遺産の文化遺産に登録),各地の温泉地や多種多様な民俗芸能,美しい田園風景など観光資源に恵まれる。1982年東北新幹線が大宮―盛岡間で開業,その後上野,東京へと延長し,2002年12月には盛岡―八戸間が開業。
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