日本大百科全書(ニッポニカ) 「菱刈」の意味・わかりやすい解説
菱刈
ひしかり
鹿児島県北部、伊佐郡(いさぐん)にあった旧町名(菱刈町(ちょう))。現在は伊佐市の南東部を占める一地区。旧菱刈町は1940年(昭和15)町制施行。町名は奈良時代に設置された郡名にちなむ。1954年(昭和29)本城(ほんじょう)村と合併。2008年(平成20)大口(おおくち)市と合併、伊佐市となった。標高170メートルほどの盆地を占め、県内では寒冷地。国道268号が通じるが、JR山野線はバス転換。近世は島津氏の直轄地で、低湿地の排水による開田が進んだ。水田の60%以上が当時の開発と推定される。良質の米(伊佐米)を産するほかタバコや畜産も盛んである。1981年に東洋一の埋蔵量をもつ金鉱脈が発見され、1985年から出鉱している。川内(せんだい)川沿いの湯之尾温泉は炭酸水素塩泉で、付近には、国指定天然記念物の川内川のチスジノリ発生地がある。
[白石太良]
『『菱刈町郷土誌』(1973・菱刈町)』