日本大百科全書(ニッポニカ) 「葉ろう石」の意味・わかりやすい解説
葉ろう石
ようろうせき
pyrophyllite
層状珪酸(けいさん)塩鉱物の一つ。ろう状の脂肪感をもつ緻密(ちみつ)な塊状で出ることが多い。酸性の火山岩や火砕岩が熱水変質を受けると生成されやすく、鋼玉(コランダム)、ダイアスポアなどを伴い、いわゆるろう石鉱床の主要な構成鉱物として産出する。一般にろう石(アガルマトライトagalmatolite)といっているものは、葉ろう石を主成分として、石英、ダイアスポア、絹雲母(きぬうんも)、カオリンなどが混じるものの鉱石名である。柔らかく、粘りがあるため昔から印材、彫刻材、石筆などに利用されてきた。現在では、粉砕・漂白して製紙用、農薬用のクレー原料として使われるほか、耐火物、陶磁器の原料としての利用が多い。日本では岡山県備前(びぜん)市三石(みついし)から産するものがもっとも有名で、江戸時代から採掘されていた。ほかに広島県庄原(しょうばら)市勝光(しょうこう)山をはじめ、兵庫県、長崎県、長野県、栃木県などに鉱床が知られる。学名は、ギリシア語の火(パイロ)と葉(フィロ)を意味する語からなり、熱すると葉片状になることに由来する。
[松原 聰]