改訂新版 世界大百科事典 「衝撃変成作用」の意味・わかりやすい解説
衝撃変成作用 (しょうげきへんせいさよう)
impact metamorphism
高い圧力の衝撃波が通過した岩石や鉱物に生ずる物理的・化学的な変化の総称。天然では隕石が地表に落下したとき,その落下速度が非常に高速であるため隕石孔を作り,その周囲の岩石に短時間の大きな変形を与える。この一部が衝撃波となって周囲に広く伝わり,衝撃変成作用を引き起こす。このようにして伝わる衝撃波によって岩石は一時的に高圧力状態になり,同時に断熱圧縮のために高温になる。そこで衝撃波の強い隕石孔付近では岩石が融解したり,鉱物が高圧で安定な相に変化する。一方,隕石孔からややはなれた所の岩石では,鉱物の塑性ひずみやクラックが多く発生する。しかし衝撃変成作用では通常の非常に長期間にわたって起こる広域変成作用や接触変成作用のような鉱物と鉱物の化学反応はほとんど起こらない。衝撃変成作用はバリンジャー隕石孔周辺の衝撃変成作用をうけた砂岩で初めて見いだされたスティショバイト(石英の高圧相)で有名となった。衝撃変成作用の強さによっていくつかの異なる岩石組織が見られる。低度の変成作用では砂岩や花コウ岩は平面的で平行な割れ目が石英,斜長石に発達する。中程度では平面的な割れ目と鉱物粒界にガラスが出現する。やや高度の変成作用ではスティショバイトやコーサイト(石英の高圧相)とガラスが形成される。さらに強い変成作用を受けると岩石はほとんどガラス化する。
執筆者:鳥海 光弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報