表見代理(読み)ひょうけんだいり

  • Scheinvollmachtドイツ語
  • ひょうけんだいり ヘウケン‥
  • ひょうけんだいり〔ヘウケン〕

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

代理権がないにもかかわらずあたかも代理権があるかのような外観を呈する場合,無権代理人が行なった代理行為は本来的には無権代理であるが,外観を信頼して取引した相手方を保護するために,代理権があったのと同じ責任を本人に負わせる制度公信の原則に似た制度で,取引の安全を保護するものである。一般に無権代理人と本人との間に特定緊密な関係が存在し,相手方が代理人の地位信するにつき無理からぬ事情が認められる場合には,表見代理が成立するといえる。民法はこの表見代理につき,(1) 本人が代理権を与えた第三者に表示した場合 (109条) ,(2) 代理人がその権限をこえる代理行為をした場合 (110条) ,(3) 代理人が代理権消滅後に代理行為をした場合 (112条) を規定している。なお表見代理にあたる場合でも,相手方は無権代理人の責任を問うことができる。

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百科事典マイペディアの解説

代理権のない者が代理人と称してなす行為(無権代理)のうち,その者と本人との間に特殊な関係があるために,本人について代理権が真実存在すると同様の効果を認める制度。第三者の保護を目的とする本人がその者に代理権を与えた旨を第三者に表示した場合(民法109条),多少の範囲の代理権のある者がその権限外の行為をなした場合(民法110条),代理人が代理権の消滅後なお代理人として行為をなした場合(民法112条)の3種がある。いずれの場合にも,表見代理が成立するには,相手方が善意・無過失であることが必要。→代理

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大辞林 第三版の解説

代理権のない者が代理行為をした場合のうち、その者と本人との間に一定の関係があり、相手方がその者を本人の正当な代理人と誤信して取引などが成立したときは、代理権がないにもかかわらず、その代理行為を有効とする制度。 → 無権代理

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

代理権がないのに代理行為をしても、本人に対して効力を生じない(無権代理として無効)。しかし外観上代理権があるかのごとくみえるときには、その外観を信じた相手方を保護する必要がある。そこで民法は、このような場合を表見代理として、本人に効力を及ぼすこととした。表見代理には三つの場合がある。一つは、代理権を授与した旨を表示した場合(民法109条)で、たとえば、自分の名前を使って取引することを許した場合などがその例である。他は、代理人が権限外の行為をした場合(同法110条)で、たとえば、10万円の取引の代理権を与えたのに50万円の取引をするなどがその例。最後は、代理権の消滅後に代理行為をした場合(同法112条)で、たとえば、代理人が任期満了後に取引をするなどがその例。これらの場合、相手方が代理人に代理権ありと信じ、そこに正当な理由があれば(善意・無過失)、代理権があったと同様の効果が生じる。[淡路剛久]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 代理権のない者が、外見上代理人として行為をした場合のうち、無権代理人と本人との間に特殊な関係がある場合をいう。本人がその者に代理権を与えたと表示した場合、代理人が代理権の範囲を越えた場合、代理権が消滅した後に代理人が行為をした場合の三つがある。いずれの場合も、正当な代理人と信じて行動した相手方は本人に対して有効な代理行為としての効果を主張できる。→無権代理

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世界大百科事典内の表見代理の言及

【偽造手形】より

…しかし,追認をするか否かは被偽造者の自由である。追認をしない場合には,被偽造者は責任を負わないのが原則であるが,この場合でも,(1)相手方が偽造者に被偽造者名義の手形行為をする権限があると信じ,相手方がそのように信じたことについて正当な理由があるときなどには,被偽造者は,表見代理の法理(民法109,110,112条)の類推適用により,手形上の責任を負わなければならない(1964年および68年の最高裁判決)。また,(2)偽造者が被偽造者の被用者であって,手形の偽造がその事業の執行につきなされたときは,被偽造者は民法715条の使用者責任の法理により,手形の所持人に対して損害賠償責任を負う(1961年の最高裁判決)。…

【代理】より

…無権代理でも一定の要件を備える場合には,相手方の信頼を保護し,取引の安全を図るために,本人がその責任を負うべきものとされている。これを〈表見代理〉という。 表見代理には大別すると3種のものがある。…

※「表見代理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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