被り(読み)カブリ

デジタル大辞泉 「被り」の意味・読み・例文・類語

かぶり【被り/冠】

かぶること。かぶるもの。「砂―」「こも―」
フィルム印画紙現像したときに、露光しなかった部分に生じる黒い曇り。
芝居寄席などの終演。打ち出し。
芝居・寄席などの大入り
(冠)
㋐「かんむり」に同じ。
「このごろの―は、昔よりははるかに高くなりたるなり」〈徒然・六五〉
官位
「其の―に二十六しなあり」〈天智紀〉
かんむりをつけるところから》元服すること。加冠
「男君達の―などし給へるも」〈栄花・月の宴〉
負担としてしょいこむこと。
「我が了簡でしたことは、皆此の身の―となる」〈松翁道話・三〉
しくじること。
「知れると大―さ」〈洒・古契三娼

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「被り」の意味・読み・例文・類語

かぶり【被・冠】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「かぶる(被)」の連用形の名詞化 )
  2. かんむり(冠)
    1. [初出の実例]「なめげにいひたてりしを、にくさにかふりをなんうち落して」(出典:落窪物語(10C後)二)
  3. 官位。
    1. [初出の実例]「因て冠位(カフリ)一級(ひとしな)を給ふ」(出典:日本書紀(720)舒明一一年一一月(図書寮本訓))
  4. ( ━する ) ( 冠をつけるところから ) 元服すること。加冠。
    1. [初出の実例]「かふりゆへに、人もまたあいなしと思ふ思ふ、わざもならへとて」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
  5. かんむり(冠)
  6. 負担としてしょいこむこと。損失や責任になること。
    1. [初出の実例]「川立は川とやらいふて、とふでしまひはこっちのかぶりになるせりふじゃぜ」(出典:洒落本・北華通情(1794))
  7. 人に対して面目ないことをしでかすこと。しくじること。
    1. [初出の実例]「今ではおれも少しかぶりの筋ぢで屋敷へは帰られず」(出典:歌舞伎・千代始音頭瀬渡(1785)三立)
  8. 和歌俳句の初めの文字。折句(おりく)の際に用いられる。
    1. [初出の実例]「哥のはじめおはりに、いろはのもじを置かる。かぶりは、らりるれろ、くつはいうあ」(出典:春のみやまぢ(1280)八月二日)
  9. 雑俳、とくに地口点取りの禁忌の一つ。本文冒頭のと同じかなや言葉を、そのまま付句のはじめに置くこと。地口尻取りでは、前句末の言葉を、付句のはじめに使用することをいう。上方口合では「仮名かずき」といった。
    1. [初出の実例]「アア、悪い悪い。おめへのは、みんなかぶりといふので笑魯や竺万点じゃア無口(はきくち)だぜ」(出典:西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉七)
  10. ( から ) 江戸では地口の出だしの文句が重なり合うこと。たとえば「お馬が通るたけのこたけのこ(筍)」(お馬が通るそこ退けそこ退け)などをいう。
    1. [初出の実例]「地口といふものも、発語(ほつご)の文字が同字なれば、冠(カブリ)と申て忌(いむ)げにござる」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
  11. 芝居、演芸などが終わること。終演。〔最新百科社会語辞典(1932)〕
  12. 芝居があたって、客が大勢くること。大入り。〔最新百科社会語辞典(1932)〕
  13. 写真で、フィルムの欠陥露出過度などによって、画面にくもりができてぼやけること。
    1. [初出の実例]「現像の進行を緩くする力を持って居るので、カブリを生ずる傾向の見えるとき」(出典:フィルム写真術(1920)〈高桑勝雄〉現像の仕度・巻フィルムの仕上)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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