アメリカ映画。1954年作品。監督アルフレッド・ヒッチコック。報道写真家のジェフ(ジェームズ・スチュアート)は取材中の事故で足を骨折して車椅子(いす)から動けない。部屋の向かい側のアパートの窓には寝たきりの女性。世話をする中年の夫にいつも当たり散らしている。ところがある日彼女の姿が消えていた。カメラマンという職業柄、ジェフはそこに犯罪の臭いを嗅(か)ぎつける。恋人のリサ(グレース・ケリー)と出入りの看護師もしだいに興味をもち始めた。窓の中の出来事を、カメラのファインダー(=フレーム)を通してのぞく主人公を、さらに観客がスクリーンを通して見るという趣向を利用して、他人の私生活への過剰な関心という社会風潮を取り上げた、アルフレッド・ヒッチコック監督円熟期の傑作。原作はウィリアム・アイリッシュの同名の短編。
[出口丈人]
… テレビジョンの脅威にさらされて映画がワイド・スクリーンとカラーの時代を迎えた1950年代は,小さいモノクロのスクリーンになじんできたスリラー映画にとって,ある意味では試行錯誤の時代でもあったが,作家たちはいわばその卑屈なまでの暗い心情から,マッカーシー時代と冷戦下の政治的に緊張した雰囲気に結びついた《拾った女》(サミュエル・フラー監督,1953),《復讐は俺に任せろ》(フリッツ・ラング監督,1954),《キッスで殺せ》(ロバート・アルドリッチ監督,1955)などの傑作を生んだ。ヒッチコックは,1本の映画を1人の人間の視点から撮るという映画的テクニックの極致に挑戦した《裏窓》(1954)に続いて,最初のビスタビジョン・スリラー《泥棒成金》(1955)をつくった。 いわば伝統的なスリラー映画の最後を飾ったバッド・ベティカー監督《暗黒街の帝王レッグス・ダイヤモンド》(1960)とサミュエル・フラー監督《殺人地帯USA》(1960)のあと,《007》シリーズが登場した60年代以降は,スリラー映画とよばれる作品は《動く標的》(1966),《ブリット》(1968),《フレンチ・コネクション》(1971),《ダーティハリー》(1971)など,カー・チェイスや暴力を主体にしたいろいろな傾向を生んで多様化して,アメリカでは《ゴッドファーザー》(1972)や《ジョーズ》(1975)までスリラー映画の範疇(はんちゆう)に数えられているが,他方,伝統的な犯罪映画としてのスリラーは〈フィルム・ノワールfilm noir〉(フランス語で暗黒映画の意)と呼ばれて区別されている。…
※「裏窓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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