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補酵素A ほこうそエーcoenzyme A

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

補酵素A
ほこうそエー
coenzyme A

補酵素の一つ。コエンザイムA (古くはコエンチームA) ともいい,CoAまたは CoASHと略する。化学的にはパンテテイン (パントテン酸とβ-メルカプトエチルアミンの結合体) がアデノシン3′-リン酸に結合した構造をもつ。アシル基を活性化し,転位させる働きをする。メルカプト基 (-SH) がその生理活性の中心であり,ここにアセチル基をはじめ他のアシル基がチオエステル結合する。この結合は高エネルギー結合で容易に他の化合物にアシル基を転位させることができる。アセチル基 (CH3CO-) を結合した形がアセチル CoAで,クエン酸回路に炭素原子2個が流入するときや,脂肪酸がβ-酸化により炭素原子2個を脱離させるときにこの形をとる。

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デジタル大辞泉の解説

ほこうそ‐エー〔ホカウソ‐〕【補酵素A】

《Aは、acetylation(アセチル化の意)の頭文字》パントテン酸を構成成分として含む、補酵素の一つ。末端にあるチオール基が、さまざまな化合物のアシル基チオエステル結合をつくり、生体内の代謝において重要な役割を果たす。アセチル補酵素Aなど。分子式C21H36N7O16P3S コエンザイムA。CoA。

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栄養・生化学辞典の解説

補酵素A

 C21H36N7O16P3S (mw767.54).

 CoAと略記する.アセチル基の代謝などにおいて重要な役割をはたす.

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

補酵素A
ほこうそえー
coenzyme A

アシル基の普遍的な担体(輸送体)であり、代謝における中枢分子の一つ。分子式C21H36N7O16P3S、分子量767.55。1953年F・A・リップマンは、酵素が触媒する多くのアセチル化には、ある熱に安定な補因子が必要であることを発見した。この補因子は補酵素A(coenzyme A, CoA)と名づけられた。この「A」はアセチル化acetylationの頭文字からきている。補酵素Aは単離され、数年後にその構造が決定された。補酵素Aの末端にあるSH基(スルフヒドリル基、メルカプト基、チオール基ともいう)が反応部位である。アセチル補酵素Aは高いアセチル化能(アセチル基転移能)をもっている。
 補酵素Aは、炭素が2個から24個、あるいはもっと長い単位からなる、さまざまな大きさの活性型アシル基を運ぶ。また、エネルギーの減損や生成、あるいは生合成のために活性型のアセチル基を供出することができる。たとえば、ある種のタンパクは長い鎖状の脂肪酸アシル基をつけ、それを使って二重層膜に根を下ろすことができる。そのほか、脂肪酸酸化、脂肪酸合成、酸化的脱炭酸反応に補酵素として作用する。パントテン酸→4-ホスホパントテン酸→4-ホスホパントテニルシステイン→4'-ホスホパンテテイン→補酵素Aの経路で生合成される。システインに由来するSH基がアシル基の担体として働く。SH基とアシル基の結合は高エネルギー結合で、ATP(アデノシン三リン酸)のリン酸結合のエネルギーに相当する。したがって、この結合には高エネルギーの供与を必要とする。
 アミノ糖のアセチル化は、リン酸エステルまたはヌクレオシドジリン酸エステルの段階でアセチル補酵素Aが使われる。
 脂肪酸の分解は炭素2個ずつの断片が順次外れていくが、反応の基質は遊離脂肪酸ではなくて、脂肪酸のカルボキシ基(カルボキシル基)と補酵素AのSH基が結合したものである。また、遊離してくる炭素2個の断片も、アセチル補酵素Aの型である。
 飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸への反応では、飽和脂肪酸アシル補酵素AとFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)を基質とする反応で、まず2-β(ベータ)-不飽和脂肪酸アシル補酵素Aが生成される。
 好気的条件、すなわち酸素の供給が十分な条件下では、ピルビン酸は酸化的に脱炭酸されてアセチル補酵素Aと炭酸ガスとになる。この過程は非可逆的で、このようにしてできたアセチル補酵素Aはクエン酸回路や脂肪酸の合成などに利用される。[有馬暉勝・有馬太郎・竹内多美代]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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