システイン(読み)しすていん(英語表記)cysteine

翻訳|cysteine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「システイン」の意味・わかりやすい解説

システイン
しすていん
cysteine

シスチンと容易に酸化還元によって相互転換する含硫アミノ酸一種メルカプト(スルフヒドリルすなわちSH)基をもつ不安定な化合物で、空気中の酸素により容易に酸化されてシスチンとなる。

 水やエタノールに溶けるが、中性・アルカリ性溶液中では不安定である。多くのタンパク質や還元型グルタチオン中に含まれる。生体内では、メチオニンの代謝経路によって生成するシスタチオニンから生合成される。すなわち、メチオニンの脱メチル生成物ホモシステインセリンの間のチオール移転反応により、中間体シスタチオニンを経て合成される。システインデスルフヒドラーゼがその嫌気的代謝に関与している。また、動物組織中にシステインやシスチンが多量に供給されると、システインは酸化されてシステイン酸となり、さらに脱炭酸されてタウリンとなる経路が進行する。

 なお、タンパク質分子中でしばしば側鎖にみられるSH基は、構造や生理機能の発現に寄与し、多くの酵素タンパクではこのSH基が酵素活性に影響することが知られている。これらのSH基はいずれもシステインのSHである。また栄養的には、システインはシスチンと同様に扱われる。

[入江伸吉]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「システイン」の意味・わかりやすい解説

システイン
cysteine

チステインともいう。略号 Cys,化学式 HSCH2CH(NH2)COOH 。含硫 α- アミノ酸の一種。シスチンをスズ塩酸とで還元して得られる。すなわち,容易に酸化還元されてシスチンと相互転換をする。蛋白質中にはしばしば含まれ,活性な SH 基をもっている。有毒な芳香族化合物と縮合してメルカプチル酸を生じるので,解毒作用がある。水,アルコールに易溶である。

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