日本映画。1960年(昭和35)、新藤兼人(しんどうかねと)監督。小さな島に夫婦(乙羽信子(おとわのぶこ)(1924―1994)、殿山泰司(とのやまたいじ)(1915―1989))と子ども二人が暮らしている。夫婦は農業や生活のための水を別の島から運んでいるが、ある日長男が死んでしまう。夫婦の過酷な水運びの日々が、全編ほとんど台詞(せりふ)なしで描かれるという実験的作品。また、独立プロダクションにより、きわめて少数のスタッフ、キャスト、そして低予算によって製作されたという点でも、大手の映画会社の作品とは一線を画した作品である。本作が製作された当時は大手の映画会社が製作と興行とをほぼ支配していた。そのため本作は完成後に上映館の確保に苦しんだ。しかし1961年のモスクワ国際映画祭でグランプリを獲得すると多数の国に輸出された。
[石塚洋史]
『『世界の映画作家31 日本映画史』(1976・キネマ旬報社)』▽『『映画史上ベスト200シリーズ 日本映画200』(1982・キネマ旬報社)』▽『佐藤忠男著『日本映画史2、3、4』増補版(2006・岩波書店)』▽『猪俣勝人・田山力哉著『日本映画作家全史 下』(社会思想社・現代教養文庫)』▽『文芸春秋編『日本映画ベスト150――大アンケートによる』(文春文庫ビジュアル版)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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