ロシアの首都モスクワで開催され、フランスのカンヌ、イタリアのベネチア、ドイツのベルリンの世界三大映画祭に次いで注目度が高い。1959年に始まり、隔年開催だったが、99年以降は毎年開かれている。
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ロシアの首都モスクワで開催される国際映画祭。前身は1935年にソビエト映画15周年を記念して、ソ連邦国際映画祭として創始されたが、これは1回限りで終わった。新たにスターリン批判後、ソ連邦国家映画委員会が主導し、映画人同盟が参加して1959年から隔年で開かれ、1999年以降は毎年開催されている。ソ連邦時代は「映画芸術のヒューマニズムと国家間の平和のために」と銘打って、参加国数、作品数ともに世界最大であった。とくに第三世界や社会主義圏からの参加が多かったが、西側世界からの参加もけっして少なくなかった。映画の内容は、反戦平和、社会問題をテーマとしたものが目だち、中小国の知られざる映画に光を当てて一定の意義があった。
最優秀作品賞を得た作品には、フェデリコ・フェリーニの『8½』(1963)と『インテルビスタ』(1987)、黒澤明の『デルス・ウザーラ』(1975)、アンジェイ・ワイダの『約束の土地』(1975)、スタンリー・クレイマーの『オクラホマ巨人』(1973)、タビアーニ兄弟の『復活』(2001)などがある。また、ピエトロ・ジェルミ、フランチェスコ・ロージ、エットレ・スコーラ等々、イタリアの監督の最優秀賞受賞の多さが目を引く。邦画からは、新藤兼人(しんどうかねと)が『裸の島』(1960)、『裸の十九才』(1970)、『生きたい』(1999)で3度最優秀作品賞を得ている。銀賞その他の賞でも、浦山桐郎(うらやまきりお)の『非行少女』(1963)、小栗康平(おぐりこうへい)の『泥の河』(1981)など日本人監督の作品が多数受賞している。そのほか、2001年から3年連続して日本人女優の宮沢りえ(1973― )、市川実日子(いちかわみかこ)(1978― )、大竹しのぶ(1957― )が最優秀女優賞を獲得している。ソ連邦崩壊後の財政的混乱のなかで、近年は国外からの参加作品が激減しており、2000年の大統領令で「ロシア映画人の国際文化交流で果たす役割の向上」を掲げたにもかかわらず、かつての存在感は低下しているようだ。
[田中 陽]
以前は国際映画製作者連盟(FIAPF)公認の国際映画祭の一つだったが、2022年のロシアのウクライナ侵攻により、公認が取り消されている。
[編集部 2024年11月18日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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