製品計画(読み)せいひんけいかく(英語表記)product planning

翻訳|product planning

改訂新版 世界大百科事典 「製品計画」の意味・わかりやすい解説

製品計画 (せいひんけいかく)
product planning

企業がどのような製品を,どのような組合せで市場に提供していくかを統合的に,企画,立案することをいう。ここでいう製品とは,企業が市場に提示する消費者ニーズ充足のための媒体であり,有形の物理的実体だけでなく,それに基づく心理的訴求をも含む包括的概念である。消費者の多様なニーズに対応して,実体的および心理的に異なるさまざまな製品が市場に提供される現象は,製品差別化と呼ばれているが,製品計画は製品差別化のもとで差別的優位性を追求する企業行動の基本的枠組みを規定するものである。

 製品の峻別可能な最小単位は製品アイテムと呼ばれる。同一の機能を有する,もしくは同一のニーズの充足を意図する製品アイテム群は製品ラインと呼ばれ,企業が提供するすべての製品ラインの組合せは製品ミックスと呼ばれる。製品ミックスにおけるラインの数が製品ミックスの幅,同一ライン内のアイテムの数がそのラインの深さ,さらに,各ラインのアイテム数の平均が製品ミックスの深さになる。製品計画は具体的には製品ラインおよび製品アイテムに関して,現在の構成が適正であるかを収益,売上げ,成長などの企業目標との整合性という観点から判断し,新製品の導入および既存製品の改良廃止について基本的指針を設定するとともに,そのための具体的施策を立案することである。とくに新しい製品ラインの追加により事業分野の拡大を図ることは製品多角化と呼ばれ,製品計画においても重要な位置を占めている。製品多角化は広義には垂直的統合(バーティカル・インテグレーション),すなわち既存の製品ライン内で,事業を原材料の生産もしくは最終製品の流通方向に拡張しようという行動を含むことがある。その場合には,垂直的統合が垂直的多角化と呼ばれるのに対して,本来の多角化は水平的多角化と呼ばれる。製品多角化を含む製品ミックスの決定にあたっては,各ラインが生産技術,流通,消費者ニーズなどの面で,互いに相乗作用を生ずるものであることが望ましい。このような要請は製品ミックスの整合性と呼ばれる。

 長期的な観点からみると,製品ラインの構成は収益性と成長性の点からバランスがとれたものでなくてはならない。成長性が高くマーケット・シェア(市場占有率)の小さいラインのグループ(収益性は低い),成長性が高くシェアも大きいグループ(適度の収益性),成熟期にあるシェアの大きいグループ(収益性が高い)を,つねに適度のバランスを保ちながら維持していくと同時に,成長期を過ぎたシェアの小さい製品ラインをなくすように管理していくことが望ましい。そのためにはつねに有望な多角化の機会をうかがうとともに,各製品ラインに対し動態的かつ全体的な視野に立った資源配分を行うことが重要となる。このような製品計画に対する長期的・動態的アプローチは,製品ポートフォリオ・マネジメントと呼ばれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「製品計画」の意味・わかりやすい解説

製品計画
せいひんけいかく
product planning

商品計画ともいう。企業が販売目標を効果的に実現するために,消費者の欲求,購買力などに合致するように製品の開発,価格,品質,デザイン,包装,商標などを企画決定する活動。マーチャンダイジング merchandisingと同義に用いられることが多い。計画の方向としては,競合商品や他社商品との比較において,これを進めていこうとする商品差別化政策と,市場を形成している消費者の特性に基づいて,これを行おうとする市場細分化政策の2つがある。

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世界大百科事典(旧版)内の製品計画の言及

【マーチャンダイジング】より

…これからすると,マーチャンダイジングは製造業,流通業の両方にまたがる広い概念であるが,一般には,卸売業や小売業で,品ぞろえや商品仕入れのための計画や管理の意味で使われている。これに対して,製造業ではもっぱら製品計画という言葉が用いられている。マーチャンダイジングは,流通業者が生産と消費の間に立って,消費者の求め(需要)に応じて商品を取りそろえて販売する(供給)ことにより,市場における需給の出会いと調節(マッチング)機能を果たしている。…

※「製品計画」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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