日本大百科全書(ニッポニカ) 「視床下部下垂体機能障害」の意味・わかりやすい解説
視床下部下垂体機能障害
ししょうかぶかすいたいきのうしょうがい
下垂体ホルモンの分泌異常をきたす疾患。下垂体のいろいろなホルモン分泌の異常は、下垂体自身の病変によってもおこるが、視床下部の病変によるものが第一で、その結果として下垂体ホルモンの分泌異常がおこる場合もあるので、両者をまとめて視床下部下垂体機能障害とよぶ。すなわち、下垂体には前葉と後葉があり、前葉からは成長ホルモン、副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺(せん)刺激ホルモン(TSH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチン、後葉からはバソプレッシン(抗利尿ホルモン)、オキシトシンというホルモンが分泌されている。ところが、これらホルモンの分泌は、下垂体のすぐ上方にある視床下部という脳の部分によって調節されており、下垂体前葉のホルモンは視床下部から分泌される放出ホルモンによって分泌が促進されたり抑制され、後葉のホルモンは視床下部でつくられ、神経線維を通って後葉に運搬され、そこから分泌されている。したがって両者が関連して機能障害をおこすことになる。具体的には、成長ホルモンの分泌過剰によっておこる巨人症や末端肥大症、分泌不足によっておこる下垂体性低身長症、副腎皮質刺激ホルモンの過剰によっておこるクッシング病、下垂体前葉ホルモンの分泌不足によっておこる下垂体前葉機能低下症、抗利尿ホルモンの不足によっておこる尿崩症、あるいは視床下部の障害によっておこる月経異常症などが含まれる。
[鎮目和夫]