日本大百科全書(ニッポニカ) 「観光漁業」の意味・わかりやすい解説
観光漁業
かんこうぎょぎょう
漁業による漁獲物の収入を期待せずに、漁業を職業としない一般人に釣りなどを楽しませ、入漁料あるいは傭船(ようせん)料を徴収して営む事業。この場合、釣りなどを楽しむことを遊漁(ゆうぎょ/ゆうりょう)といい、これに対してもっぱら漁業を職業とすることを職漁(しょくりょう)という。
日本では昭和40年代から、野外でレジャーを楽しむ人口が増え、それに伴って釣り人も急増した。遊漁は、従来からあった船宿や釣り船のほかに、職漁者が操業の合間に客を乗せて釣りをさせたり、網などで漁獲した魚貝類を供給したり、民宿を経営するなどして、客の漁獲物を調理して供するようになった。また、地方自治体や漁業組合なども、それぞれの地域の河川や湖沼および海岸の釣り場を整備したり、フィッシングセンターを設置したりして、釣りを楽しむ、いわゆる観光客を誘導して観光収入をあげる努力をしているところもある。さらにホエールウォッチング、イルカウォッチングなども各地で行われるようになった。
しかし、これらの観光漁業も、漁業規制や漁場をめぐって職漁者との利害が対立するなどトラブルが起こったりしている。さらに、釣り具(鉤(はり)、テグスなど)、空き缶やレジ袋などの廃棄物や、撒き餌(まきえ)(コマセ)の過剰投入による水質汚染など、漁場そのものを荒廃させてしまうなど多くの問題が生じている。
[吉原喜好]