入ってきたパルス信号の回数を電気的に数える電子回路。放射線粒子や光子の個数計算、周波数や時間の精確な測定、電子計算機の基本構成などのデジタル回路に広く用いられている。フリップフロップで構成した2進計数回路や、その変形であるn進計数回路、リング計数回路などがあり、トランジスタや集積回路を用いて毎秒1億パルス程度は容易に計数できる。また、特殊な放電管や電子管を用いる場合もある。
2進計数回路の基本回路は、入力パルスを加えると状態が反転し、次のパルスで元の状態に戻るT(またはJK)フリップフロップである。これをn個縦続接続すると2n進計数回路が形成できるが、4個接続した16進計数回路を、計数の途中から論理回路で帰還路をつくると10進計数回路が構成できる。これを一般化したn進計数回路にグレゴリコード計数回路がある。リング計数回路はシフトレジスターを環状に結線したもので、一つのフリップフロップのみを1にセットし、他をすべて0にセットして、シフト(桁(けた)送り)パルスを加えると1の位置がシフトすることを利用している。JKフリップフロップで構成されるが、数に比例してフリップフロップが必要なため、計数用としてでなく、計算機などのタイミングパルス発生回路に使われている。なお、加算・減算の一方向のみに動作するのではなく、加算と減算の両機能をもった回路も構成されており、これを可逆計数回路またはアップダウンコンバーターとよぶ。
[岩田倫典]
『米山正雄著『パルスとディジタル回路』(1976・東海大学出版会)』
1桁もしくは複数桁の数を記憶でき,かつ入力信号によって内容が1ずつ増加もしくは減少するように構成されたディジタル電子回路で,コンピューターや各種の自動制御,計測システムなどの重要な基本構成要素である。
入力があるごとに内部状態が反転するフリップフロップ回路は,二進数を記憶し二進法の加(減)算規則によって計数動作をするので,これを組み合わせて任意数の計数器を作ることができる。n個のフリップフロップ回路は2nまでの数を計数できるが,n以下のm個の入力があったとき初期状態にリセットするようにすればm進カウンターとなる。例えばフリップフロップ回路を4個用いれば24=十六進計数器となるが,10回入力があったときリセットするようにすれば通常用いる十進計数器となる。入力の加え方と回路の結合法で加算も減算もできるので可逆計数器up-down counterもできる。また記憶機能を用いて計数前に任意数をセットできるので,これから入力で減算し予定数で動作を停止,開始させる自動制御用のプリセットカウンターも作ることができる。集積化された回路では毎秒1億回以上の高速度計数も容易である。
執筆者:川又 晃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
パルスの数を数える回路.基本となる回路は,トランジスターまたは真空管を用いたフリップフロップ回路による2進計数回路である.2進計数回路を組み合わせて10進計数回路とすることもでき,ネオンランプや数字表示管に接続すれば,直接パルス数を読みとることができる.また,グロー放電を利用したデカトロン,電子ビームを静電的に移動させて計数を表示するE1T(イー・ワン・ティー)などの計数専用管を含んだ回路もある.高速計数を行うためにはもちろんであるが,一定時間内の計数は少なくても,現象が確率事象である放射能の測定などでは,分解時間をできるだけ短くする必要がある.たとえば,フリップフロップ回路による10進計数回路やE1Tの場合は約1 μs,デカトロンでは50~100 μs 程度である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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