訴訟担当(読み)そしょうたんとう

改訂新版 世界大百科事典 「訴訟担当」の意味・わかりやすい解説

訴訟担当 (そしょうたんとう)

権利義務の本来の帰属主体以外の第三者が当事者となり訴訟を追行すること。第三者の訴訟担当ともいう。形は代理と似ているが,第三者が自己の名で訴訟を追行する(当事者となる)点で,本人の名で訴訟を行う(本人が当事者である)代理と異なる。たとえば,遺言執行者遺言効力をめぐり相続人と訴訟をすることがありうるが,遺言執行者を相続人の代理人と解すると同一の相続人が代理人を介して原告かつ被告となる矛盾が生じる。訴訟担当とすれば,遺言執行者が当事者になるのであるからこの矛盾は生じない。このほか,死者の身分関係が訴訟物となる場合(人事訴訟手続法2条3項),第三者が本来の権利義務の帰属主体とは別の独自の利益を持つ場合(債権者代位訴訟,債権の取立訴訟など),訴訟関係で簡略にする場合(選定当事者等)などに訴訟担当が用いられる。

 訴訟担当には,法律の規定に基づく法定訴訟担当と,権利義務の帰属主体の授権を要する任意的訴訟担当とがある。任意的訴訟担当は,法律が明文で許容する場合(民事訴訟法30条の選定当事者,手形法18条の取立委任裏書)以外にどこまで許容してよいかは議論がある。司法の公正さ,関係者の利益を害するおそれがあるからであるが,近時合理性があればゆるやかに認めようとする傾向にある。なお,訴訟担当者が受けた判決の効力は,本来の権利義務の帰属主体にも及ぶ(民事訴訟法115条1項2号)。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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