日本の古文書の一様式。ある事実を証明する証拠能力を有する文書の総称としての〈証文〉と同義に使われることも多いが,とくには,訴訟の裁定のために提出を要請される書面証言を記した文書。後者の場合は,むしろ〈起請文〉〈誓状〉の一形式であって,〈相論の時,証人に尋ねらるるの事,訴論人の注文につき,両方の縁者を除き,起請文の詞を載せて証状を召さるるの条,傍例たり〉(《山田氏文書》1300年(正安2)7月2日鎮西下知状)といわれたように,裁判機関の問状(といじよう)をうけて,起請文をもって提出された。ただし,〈祭文起請,公家は用いられず〉(《玉葉》1187年(文治3)5月16日条)とあるように,公家では訴訟手続に起請文を用いない伝統があった。裁判における証状=誓状の利用は,平安時代末期の検非違使庁の庁例における北野社参籠起請に始まり,鎌倉幕府法において全面的に発展し,中世を通じて行われた。
執筆者:保立 道久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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