アメリカの作家ヘミングウェイの代表的長編小説の一つ。スペイン内乱を背景に、アメリカ青年の英雄的な死と灼熱(しゃくねつ)的な恋を描く。1940年刊。反ファシスト軍に参加したロバート・ジョーダンは、戦略上重要な橋梁(きょうりょう)を爆破する任務を帯びて山中に赴き、ゲリラの協力を求める。ファシストに両親を殺され、自身も犯された過去をもつマリアと3日間の激しい恋に落ちる。連絡の不備などからむだになったのを知りながら爆破を実行、重傷を受け、仲間を逃して自らは死に臨む。全体のために個人を犠牲にする美徳を称揚し、個人主義的傾向の強かった作者の変化ぶりをみせている。スペインの国民と風土を愛していた作者は、反ファシスト軍援助に奔走し、前線にも出入りした。題名はイギリスの詩人・聖職者ジョン・ダンの説教に基づき、「個人は人類の一部であり、他の人の弔鐘はあなたのためにも鳴っている」という意。
[武藤脩二]
『大久保康雄訳『誰がために鐘は鳴る』(新潮文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… その後の彼は,一種の時代の偶像として,アフリカでの猛獣狩り,スペイン内乱での救援活動,第2次大戦への参戦,再訪したアフリカでの飛行機事故,キューバ沖での海釣りなど,そのタフな活躍ぶりが逐一報道されるほどの名声を得たが,作家としての幅の狭さや歴史的・社会的意識の欠如に対する批判,ことに往年の自己抑制力を失って短所ばかりの目だつ《持つと持たぬと》(1937)や《川を渡って木立の中へ》(1950)の不評に苦しんだ。その間,短編集《勝者には何もやるな》(1933)での成果,スペイン内乱を描く《誰(た)がために鐘は鳴る》(1940)の商業的成功,そして闘牛と猛獣狩りを扱うノンフィクション《午後の死》(1932)と《アフリカの緑の丘》(1935)の執筆などが特記される。のち,老いた漁師と大魚の神話的な死闘を語る《老人と海》(1952)で再び腕のさえを示した彼は,1954年ノーベル賞を受賞したが,61年猟銃で自殺をとげた。…
※「誰がために鐘は鳴る」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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