中世の裁判で,訴えられた被告をいい,訴人とあわせて訴論人といった。鎌倉幕府の訴訟手続では,訴えが受理されると,訴状に問状御教書(といじょうみぎょうしょ)(答弁催促状)を添えて論人に交付される。論人はこれに対する答弁書である陳状を提出し,これが3度くり返されて(三問三答の訴陳(そちん)),問注に至る。
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…侍所・六波羅検断方とも,以後は所務沙汰に類似の訴訟手続となる。裁判所から論人(被告)に問状(もんじよう∥といじよう)を発し,三問三答という書面による弁論,対決という口頭弁論を経て判決に至るのが所務沙汰の基本であるが,検断沙汰では直ちに問状召文(もんじようのめしぶみ)を発して論人を出頭させ,書面による訴陳を経て対決,判決に至る。訴状には犯罪発生の日時,場所,事実,論人を含む実行行為者の名を明示する必要があり,匿名の投書はこの制度のなかでは受理されない。…
…以後,越前・尾張を境として東国は鎌倉の引付方,西国は六波羅探題の引付方,1293年(永仁1)の鎮西探題設置後は九州は探題が管掌し,いずれも終局判決を与えた。
[訴訟手続]
原告を訴人,被告を論人,訴象対象地を論所という。訴人は訴状を提出し,問注所の所務賦(しよむのくばり)という担当奉行が形式的な要件の欠陥を審査したうえで受理し,賦双紙(くばりそうし)という帳簿に登録し,訴状(申状ともいう)に銘を加え(折りたたんだ訴状の端の裏の部位に案件を示す見出しと年号月日の数字を書くこと),引付方に送付して,訴が裁判所に係属したことになる。…
…ただし,物を徴集するための徴符を召文と呼ぶこともあった。すでに平安時代の検非違使庁においても召符が使用されたが,とくに中世幕府法の訴訟制度において,被訴者=論人(ろんにん)の出頭を命ずる召喚状がよく知られている。それは,制度的には三問三答などの文書審理を経て,訴論人の〈対決〉=口頭弁論を行うためのものであったが,現実には,事柄が検断沙汰=刑事事件にかかわる場合,あるいは論人が強い嫌疑をかけられていたり陳状提出を忌避したりした場合,などに発給されることが多かった。…
※「論人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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