三問三答(読み)さんもんさんとう

精選版 日本国語大辞典 「三問三答」の意味・読み・例文・類語

さんもん‐さんとう ‥サンタフ【三問三答】

〘名〙 中世、鎌倉・室町幕府の訴訟手続きで、訴人原告)の訴状に対して論人被告)が陳状裁判所提出する問答が三回にまで及んでなされること。このことを三問三答を番(つが)うという。
高野山文書‐弘安六年(1283)六月二八日・開田准后法助書状案「此上は両方三問三答之後、可合宿老之綱位歟之由存候」

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デジタル大辞泉 「三問三答」の意味・読み・例文・類語

さんもん‐さんとう〔‐サンタフ〕【三問三答】

中世、鎌倉・室町幕府における訴訟手続き形式。訴人(原告)は申し状(訴状)に具書証拠書類)を添えて奉行所に訴え、奉行所は論人(被告)に問状といじょうを出し、陳状(答弁書)を提出させる。この手続きを三度繰り返すこと。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三問三答」の意味・わかりやすい解説

三問三答
さんもんさんとう

中世の訴訟手続の一段階。訴人(原告)が訴状を裁判機関に提出し、手続的要件の審査を経て受理されると、論人(ろんにん)(被告)に弁明を求めるための問状(もんじょう)が出され、問状と訴状を受け取った論人は、陳状(答弁書)を提出して訴人の主張を弁駁(べんばく)する。これを三度繰り返す。訴人・論人とも3回ずつ書面によって自己の主張を表明するわけで、訴陳状と、必要な具書(ぐしょ)(証拠書類)を提出する。この手続は鎌倉幕府のもとで、とくに中期以降に典型的に発達した。三問三答が終わると、訴陳状だけで理非が明白ならばただちに判決が下るが、多くは裁判機関のもとで訴陳状を交互に張り継いで当事者が確認したうえ、法廷での対決口頭弁論)を経て判決が下される。公家(くげ)・本所(ほんじょ)でも行われたが、二問二答の場合もあった。

[羽下徳彦]

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旺文社日本史事典 三訂版 「三問三答」の解説

三問三答
さんもんさんとう

中世における幕府の訴訟手続きの形式
訴えを提起する者(訴人)は,訴状に証拠書類を添えて問注所の賦 (くばり) 奉行に提出。賦奉行がそれを引付 (ひきつけ) にまわすと,引付は被告(論人)に答弁を求める問状 (といじよう) を発する。問状をうけた論人は陳状(答弁の書)を出してこれに答える。このような訴状・陳状の交換は3度まで行われ,「三問三答の訴陳に番 (つがう) 」といわれ,この間に幕府が判決を下した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「三問三答」の解説

三問三答
さんもんさんとう

中世の裁判手続で,裁判所を介して原告(訴人(そにん))と被告(論人(ろんにん))の書面による応酬が3回まで行われる場合があり(本解状―初陳状・初答状,二問状―二答状,三問状―三答状),これを三問三答といった。その後あるいは途中に訴人と論人は裁判所に出頭して口頭弁論(対決)を行い,判決にいたる。

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世界大百科事典(旧版)内の三問三答の言及

【所務沙汰】より

…論人は応訴するならば陳状(支状(ささえじよう),申状ともいう)を提出する。この書面による弁論を3度繰り返すので三問三答という。訴状は解状(げじよう)とも,2,3度目は二,三問状とも重申状ともいい,訴陳状の交換を訴陳に番(つが)うという。…

【訴状】より

…書出しに差出者を記すので最後の日付の下に差出者を記さないこと,宛所(あてどころ)がないことなどが本来的な特徴である。また,中世の裁判では,三問三答といわれるように数回の訴陳状の応酬があるのが普通で,最初の訴状を本解状,初問状,2回目と3回目を二問状,三問状,後者を総じて重訴状,重申状といった。訴状が提出されると,担当の役人・奉行の確認(裏封などの形をとった)を経て,論人に交付された。…

※「三問三答」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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