京都の東寺(教王護国寺)に伝存した平安~江戸時代初期までの文書。東寺が寺の運営上の必要から集積した文書で、東寺の法会(ほうえ)仏事に関するもの、荘園(しょうえん)経営を中心とした寺院経済に関するものなどである。このなかには各法会組織の議事録である引付(ひきつけ)も多数みられ、単に東寺一山の史料としてだけではなく、日本の古代・中世の政治、経済、社会に関する必須(ひっす)の史料である。ことに東寺の宗教活動が、鎌倉中期以降急速に活発化すること、ほとんど火災の被害にあわなかったことなどの理由から、鎌倉時代中ごろ以降の文書の残存の密度が高い。江戸時代になって、加賀藩5代藩主松雲公(しょううんこう)前田綱紀(つなのり)が、この文書の目録をつくり一部を書写し、100の桐(きり)箱を寄進してこれに収めたところから百合文書と名づけられた。江戸時代以降、ことに明治の初期には、多くの寺社の文書が散逸しているが、この文書がほぼ完全な形で伝えられたのは、綱紀の百合の寄進に負うところが大きい。1967年(昭和42)に東寺から京都府に譲渡され、府立総合資料館で整理を完了、国の重要文化財に指定され一般に公開されている。指定時の文書数は2万4014通である。これ以外の東寺関係文書としては、東寺文書(東寺現蔵)、教王護国寺文書(京都大学文学部所蔵)その他があるが、これらもすべて元はこの百合文書に収められていたものである。2015年(平成27)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産(現、世界の記憶)に登録された。
[上島 有]
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…京都の東寺(教王護国寺)に伝来した文書の総称。〈東寺百合文書(とうじひやくごうもんじよ)〉,〈東寺文書〉(狭義の),〈教王護国寺文書〉が主たるものであるが,そのほかわずかずつ各所に分蔵されている。このうちで中心となる〈東寺百合文書〉は平安時代以来,東寺がその必要から集積した文書で,東寺の法会仏事に関するもの,荘園経営を中心とした寺院経済に関するものなど,古代・中世寺院としての東寺の運営全般にかかわる内容をもつ。…
※「東寺百合文書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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