(1)日本の古文書の一様式。一般に上級の人格または機関の勘問に対して,自己の非ならざる理由を陳弁する上申文書。勘問はさまざまな理由で行われたが,訴訟において訴人の提出した訴状への陳答を求める場合が多く,この場合,訴状と陳状の両者を総称して訴陳状といった。その書式は,本来は解(げ)状の形式であるが,中世,〈何某謹陳(弁)申〉〈何某支言上〉などと書き出し,〈陳(弁)申如件〉〈支言上如件〉などと書き止める申状の形式が多用された。内容は,対象となる物件や事柄,副進の証拠文書,訴状の要約とその論点への弁駁などからなる。訴状と同様に,最初の陳状を初答状,2回目,3回目の陳状を二答状,三答状といい,後者を総じて重陳状ともいった。本来,充所や日付の下(日下(につか)という)の差出書を有さないことも訴状と共通する。陳状の提出を故意におくらすと陳状違背といい,敗訴となるのが一般であったが,裁判機関の法権を容認せず,他の権威を募って勘問自体を拒否することもみられた。
執筆者:保立 道久(2)歌論様式の一つで,歌合の作者が判者の判に承服できない場合に,自己の信念を開陳して反駁した書簡体のもの。歌合が文芸主義に傾き,文学評論として発達した平安後期に現れ,《高陽院(かやのいん)歌合》(1094)の経信判に対する筑前のものが現存最古である。鎌倉時代の《六百番歌合》の俊成判に対する顕昭の《顕昭陳状》が古来最も名高く,他に《蓮性陳状》等がある。
執筆者:竹下 豊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中世の訴訟制度において訴状に対し、それを反論弁駁(べんばく)するために論人(ろんにん)(被告)が提出する文書。支状(ささえじょう)、目安(めやす)ともいう。書式は一定していないが、書き出しは「某謹陳申(つつしんでちんじもうす)」「某謹弁申(つつしんでべんじもうす)」「某支言上(ささえごんじょうす)」などと記され、書き止めは「陳申如件(くだんのごとし)」「弁申如件」「支言上如件」などと記された。用紙は通例は竪紙(たてがみ)であるが、ときには折紙(おりがみ)(この場合日付は記されない)も用いられた。中世の裁判は当事者主義的傾向が強く、訴人(原告)と論人の文書を通しての応酬(訴陳(そちん)に番(つが)う)が重要な位置を占めたが、幕府法ではそれが3回まで認められた(三問三答。公家(くげ)法は2回)。最初の陳状は初答状、2回目は二答状、3回目は三答状といい、二答状と三答状は重陳状(かさねちんじょう)ともよばれた。
[黒田弘子]
支状(ささえじょう)とも。中世の裁判関係の文書の一つ。被告が,訴状(そじょう)の内容に対する自己の主張を記して裁判所に提出した文書。「何某謹陳申」「何某謹弁申」「何某支言上」などの書出しで「陳申如件」「弁申如件」「支言上如件」といった書止めをもつ。原告(訴人(そにん))と被告(論人(ろんにん))は裁判所を介し2回,3回と文書による応酬を行うことがあり,それらは重訴状(二問状・三問状)および重陳状(二答状・三答状)とよばれた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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