貫前神社(読み)ヌキサキジンジャ

デジタル大辞泉 「貫前神社」の意味・読み・例文・類語

ぬきさき‐じんじゃ【貫前神社】

一之宮いちのみや貫前神社の旧称。

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日本歴史地名大系 「貫前神社」の解説

貫前神社
ぬきさきじんじや

[現在地名]富岡市一ノ宮

正式名称は一之宮貫前神社かぶら川左岸の河岸段丘上、国道二五四号北側の表参道からよもぎヶ丘に登り、総門から下り参道となって丘陵北斜面の綾女あやめ谷を切り開いて南面して鎮座する。祭神は経津主神・比売大神の二柱。式内社で名神大社、上野国一宮。旧国幣中社。本社境内地約八万七一〇〇平方メートル、飛地境内地が字鳥坂とりさか山下やました引土ひきつち本町ほんまち神農原かのはらの字宿尻しゆくじりの五ヵ所にある。

創建は社伝では安閑天皇元年三月。「神道集(上野国一ノ宮事)には安閑天皇二年三月中頃に抜鉾大明神が上信国境の笹岡ささおか山に鉾を逆さに立てて御座、白鳳六年(六七七、貫前神社本は白鳳七年)三月に菖蒲あやめ谷に社壇を建立したとある。「社譜」「御神譜」(尾崎家蔵)などもおおむね同内容を記す。神階は「三代実録」などによると承和六年(八三九)従五位下、貞観元年(八五九)従四位下勲八等、同九年従四位上勲八等、同一八年正四位下勲八等、元慶二年(八七八)正四位上勲八等、同四年従三位勲七等、寛平三年(八九一)正三位、延喜一六年(九一六)従二位名神大社、のち正一位勲五等(上野国神名帳、勅額)となる。大同元年(八〇六)の牒(新抄格勅符抄)で「上野抜鉾神」は封戸二戸を与えられる。抜鉾神は「神道集」などには南天竺からの外来神とされる。「和名抄」の郷名に貫前・抜鉾ぬきほこ両郷があり、社名も両者がみられ、史料上では以下のように記される。

抜鉾神(新抄格勅符抄、続日本後紀、三代実録、朝野群載、吾妻鏡、神道集)、抜鉾大明神(交替実録帳、神道集、上野国一ノ宮御縁起、上野国神名帳総社本、同豊橋市立図書館本―ヌキノサキと仮名あり、同佐々木本、西埜私記、上野国風土記、和漢三才図会―バツムノと仮名あり、延喜式神名帳頭註―ハツモと仮名あり)、抜鉾太神(一宮本上野国神名帳―ヌキサキと仮名あり)、抜鉾大神(佐々木本上野国神名帳、一宮抜鉾大神御縁起、巡礼旧神祠記目録)、抜鉾社(上野志)、抜鉾神社(神社啓蒙巻之四―ハツモノと仮名あり)、貫前神社(九条家本延喜式神名帳、上野国風土記、神名帳考証、巡礼旧神祠記目録、諸社祭神考)、貫前神(三代実録、日本後紀、朝野群載)、貫前大神(山吹日記)、貫前大明神(一宮順拝記、一宮巡詣記、国志、延喜式神名帳頭註)、貫前社などとあり、「一宮巡詣記」元禄九年(一六九六)六月一五日条に「本尊稚日女尊、相殿経津主命」とあるように、主神を女神、相殿を男神としている。つまり初め二神二社で、貫前神は甘楽かんら郡鏑川渓谷に古くから居住した渡来人の崇敬神、抜鉾神は碓氷うすい郡・甘楽郡にいた物部氏およびその一族の崇敬神であって、これが混同され二神一社として扱われていた。

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改訂新版 世界大百科事典 「貫前神社」の意味・わかりやすい解説

貫前神社 (ぬきさきじんじゃ)

群馬県富岡市一ノ宮に鎮座。経津主(ふつぬし)神,比売(ひめ)大神をまつる。現社名一之宮貫前神社。創建年代不詳。旧社家磯部氏は本姓物部氏との伝承をもつところよりしても,物部一族が古く氏神の石上神宮の経津主神を奉じ来り,鎮祭したものかとみられる。古名抜鋒(ぬきさき)また抜鉾(ぬきさき)と記すのも武神を示すものであろう。839年(承和6)従五位下,以後しだいに昇進し,880年(元慶4)従三位勲七等となり,延喜の制で名神大社,のち上野国一宮とされ,《上野国神名帳》に〈正一位抜鉾太神〉と記されている。上野国は武将の出入りがはげしかったが,藤原秀郷(ひでさと)が当社に治乱を祈願以降,源頼義・義家,新田義貞脇屋義助,足利尊氏らが崇敬して種々の寄進をし,さらに北条,上杉,武田,織田,前田氏らも崇敬,社殿造営,神領寄進のことをし,戦乱の世にも古制による式年遷宮を行った。近世に入り,徳川家康が社殿造営のあと,1635年(寛永12)家光が現社殿を造営,朱印領176石余を寄進した。明治の制で国幣中社。本殿内部は2階となり,雷神小窓を有する特殊型式。申年ごとに仮殿を建て遷宮し,酉年に本殿へ還御の遷宮を行うほか,特殊神事の多いことで有名で,1月15日筒粥神事,2月22日注連釣行事,3月4日神酒造行事,3月14日御戸開祭,3月15日例祭,11月22日注連釣行事,12月8日川瀬行事,鹿卜神事,12月11日御機織神事,12月12日冬の御戸祭,御食盛行事,12月15日鎮の神事などを通して,神道的祭祀の根源も知りうるのである。
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百科事典マイペディア 「貫前神社」の意味・わかりやすい解説

貫前神社【ぬきさきじんじゃ】

群馬県富岡市一之宮に鎮座。正称は〈一之宮貫前神社〉。旧国幣中社。経津主(ふつぬし)神などをまつる。物部(もののべ)氏の東方移住に伴い創建したと伝える。延喜式内の名神大社とされ,上野(こうずけ)国の一宮。農業・養蚕の神として信仰される。例祭は3月15日。ほかに御戸開祭(3月14日,12月12日),筒粥祭(1月15日),鹿占(しかうら)神事(12月8日)など。ことに13年目ごとの申(さる)年の式年遷宮は有名。本殿・拝殿,白銅月宮鑑などの重要文化財がある。
→関連項目富岡[市]春祭

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貫前神社」の意味・わかりやすい解説

貫前神社
ぬきさきじんじゃ

群馬県富岡市一ノ宮に鎮座する元国幣中社。一宮貫前神社,抜鉾 (ぬきさき) 明神ともいう。祭神はフツヌシノカミ,ヒメガミ。例祭3月 15日。養蚕,農業,利民の神。 13年目ごとに式年遷宮をする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「貫前神社」の意味・わかりやすい解説

貫前神社
ぬきさきじんじゃ

一之宮貫前神社

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世界大百科事典(旧版)内の貫前神社の言及

【太占】より

…令制以降は鹿卜から亀卜へと変わった。群馬県の貫前(ぬきさき)神社等では,神事として鹿卜の占法が現在も行われる。卜骨【茂木 貞純】。…

※「貫前神社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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