神道集(読み)シントウシュウ

デジタル大辞泉 「神道集」の意味・読み・例文・類語

しんとうしゅう〔シンタウシフ〕【神道集】

南北朝時代説話集。10巻。正平13=延文3年(1358)ごろの成立。諸国の神社の縁起や神祇関係の事柄を集録。神道書。諸社根元抄。

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精選版 日本国語大辞典 「神道集」の意味・読み・例文・類語

しんとうしゅうシンタウシフ【神道集】

  1. 南北朝時代の唱導説話集。一〇巻。延文三年(一三五八)頃の成立か。また、現存本は一五世紀初頭の改編とする説がある。安居院(あぐい)末流の東国唱導僧、特に上野国(群馬県)関係の者の編かといわれる。全五〇章で神道論の章と、日本各地の諸社の縁起を語る章などから成る。話柄・文体・成立基盤において、軍記・中世小説・説経・古浄瑠璃などとの関係が深く、本地物の原型的な姿を示す説話が多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「神道集」の意味・わかりやすい解説

神道集 (しんとうしゅう)

説話集。各巻の内題の下に〈安居院(あぐい)作〉と記すが,実際の編者は不明。南北朝時代(1350-60ころ)の成立か。10巻50条。巻一冒頭と巻五に〈神道由来之事〉〈天神七代事〉と伊勢神道と天台宗の色彩の強い神仏習合の教義をまとめておくなど,神道論書の体裁を整えてはいるが,中心は諸国の神社の神体の本地仏の功徳と前生説話を述べる部分にある。神社の範囲は畿内から諸国にわたっているが,伊勢,宇佐八幡,正八幡(石清水八幡),祇園,稲荷,春日,熱田など畿内を中心とした有力神社は北野以外,前生物語を欠く。これに対し,熊野,二所権現(伊豆山と箱根),三嶋,富士浅間,諏訪など東日本に信仰圏を置く神社は詳細な前生物語を載せ,特に赤城,伊香保,児持山,那波八郎など,上野国の利根川西部の神々の物語が関連のある一群をなす点に特色がある。それらの物語は,土地の神々が前生で生身の人間としての苦難を体験し,その恨みを契機として慈悲を垂れる神明となるという構造をもつ。特にその苦難が多くは夫婦・肉親との別離をモティーフとし,在地性に裏付けられている点が注意される。その原話の多くはおそらく土地の神社の別当寺院に属する人々により勧進唱導のため語りひろめられていたものらしく,御伽草子の〈本地物(ほんじもの)〉として文芸読物化した形で流布したり,群馬県西部を中心に寺院縁起語り物として江戸時代末期まで伝えられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神道集」の意味・わかりやすい解説

神道集
しんとうしゅう

説話集。「安居院(あぐい)作」と記してあるが、具体的な編者は不明。14世紀後半(文和(ぶんな)・延文(えんぶん)年間)の成立か。10巻50条。天台宗および伊勢(いせ)神道色の濃い本地垂迹(ほんじすいじゃく)の教義と、有名諸神社の本地仏を記してある。とくに赤城(あかぎ)・伊香保(いかほ)・児持山(こもちやま)大明神など上野(こうずけ)国(群馬県)の利根川(とねがわ)西側の神社を中心にして、ほかに熊野・伊豆箱根二所・諏訪(すわ)など関東地方に信仰圏を有した有力神社については垂迹の縁起および神々の前生物語(本地譚(ほんじたん))を記してある。それらは室町物語や説経浄瑠璃(じょうるり)などの本地物(『熊野の本地』『五衰殿(ごすいでん)』『みしま』『諏訪の本地』など)が文芸として成立する以前の、在地の信仰や民俗をそのまま反映した説話として貴重な存在である。本書の本地説話に共通する理念として、神々がその地に慈悲を垂れる神明として顕(あらわ)れるには、前生で人間界に生まれて苦難を受けることが必須(ひっす)とされ、それら苦難の多くが夫婦を中心とした肉親との別離の悲哀(愛別離苦)をモチーフとしている点が特色である。宣命(せんみょう)体風の漢字表記に、真名本(まなぼん)『曽我(そが)物語』や四部合戦状本『平家物語』、『平家族伝抄』と共通した特異な当て字と文章がみられ、それらと言語圏、信仰圏が重なると想像されているが、実態はまだ明らかでない。諸本に古本系(赤木文庫本など)と流布本(東洋文庫本など)があり、後者は整備敷衍(ふえん)されて地方色を薄めている。

[村上 学]

『貴志正造訳『神道集』(平凡社・東洋文庫)』

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百科事典マイペディア 「神道集」の意味・わかりやすい解説

神道集【しんとうしゅう】

南北朝期の説話集。10巻50章。各巻内題の下に〈安居院作〉と記すが具体的な作者は不詳。本地垂迹の教義を述べ,諸社に祀られている神の本地やその垂迹の物語(本地物)を説いたもの。在地性の強い説話が多く,また神が前世において生身の人間としての苦難の生涯を送り,それを契機に神として顕現したことを語っている点が注目される。
→関連項目赤城神社甲賀三郎説話文学

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神道集」の意味・わかりやすい解説

神道集
しんとうしゅう

南北朝時代の説話集。 10巻 50章。正平 13=延文3 (1358) 年前後の成立。説経の安居院 (あぐい) 一流に伝承するところを集成したもの。両部神道の所説が数章あるが,諸国の神社の縁起を述べた本地 (ほんじ) 説話が約 40章あり,物語小説,特に本地物との関係が深い。関東地方,特に上野 (こうずけ) の神社が多く取上げられているが,北野天神,諏訪明神,二所権現,熊野権現などに関するものが有名。地方口碑,民間信仰を知る資料。

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世界大百科事典(旧版)内の神道集の言及

【時宗】より

…《太平記》《明徳記》《大塔物語》などの軍記物には,戦場で活動する時宗の僧がさまざまに描かれている。時宗の影響の濃い典籍として《神道集》をあげることができる。数々の神社の縁起を集成したこの書は,時宗と神祇信仰との結びつきの強さを知らせてくれる。…

【説話文学】より

…《長谷寺(霊)験記》《春日権現験記》のごとき寺社の霊験集,地蔵・観音以下の神仏利益集類が簇出したのもこのころからである。鎌倉末期から室町時代にかけては,《神道集》と《三国伝記》に注目したい。前者は南北朝時代に集成された安居院(あぐい)流の語り物集で,中世本地物語の一源流と見られ,後者は室町初期に成った伝統的な三国説話の集成書ながら,仏教説話集的性格から座談形式の伽(とぎ)物語的作品に移行している点が見のがせない。…

※「神道集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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