貯蓄投資の所得決定理論(読み)ちょちくとうしのしょとくけっていりろん

百科事典マイペディア 「貯蓄投資の所得決定理論」の意味・わかりやすい解説

貯蓄投資の所得決定理論【ちょちくとうしのしょとくけっていりろん】

ケインズの唱えた国民所得理論。一定期間の国民所得消費投資からなる有効需要の大きさで決定されるが,所得から消費を引いた差額貯蓄全部投資されるとは限らない。したがって投資が貯蓄を下回る場合は,国民所得水準は低下し,所得が減少すると貯蓄も減少する。こうして所得は貯蓄が投資と等しくなるまで低下し,逆に投資が貯蓄を上回る場合は,所得は貯蓄が投資と等しくなるまで上昇し,結局投資は投資と等しい貯蓄が生まれる点まで国民所得水準を変化させる。これが貯蓄投資の所得決定理論で,利子率が投資と貯蓄を均等化させるという古典派の理論を否定した。→乗数理論
→関連項目ケインズ学派雇用・利子および貨幣の一般理論

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貯蓄投資の所得決定理論」の意味・わかりやすい解説

貯蓄・投資の所得決定理論
ちょちく・とうしのしょとくけっていりろん
saving-investment theory of income determination

J.M.ケインズが唱えた所得決定理論。古典学派は投資と貯蓄はともに利子率の関数であり,利子率は投資と貯蓄が均衡する水準で決定されるとした。これに対しケインズは貯蓄は所得の関数,投資は利子率あるいは所得の関数であり,投資と貯蓄の均衡点で所得水準は決定されると主張した。たとえば投資が貯蓄を下回る場合は国民所得水準が低下し,所得が減少すれば貯蓄も減少するところとなり,結局所得は貯蓄と投資が等しくなるまで低下するというもの。この理論によれば,国民所得水準は必ずしも完全雇用を保障するような水準にはならない。古典学派的な完全雇用水準の無批判的前提を否定し,失業発生の可能性を考慮にいれつつ,国民所得水準の変動メカニズムを明らかにした点で経済学説史上大きな意義をもつ。

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