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乗数理論 じょうすうりろん theory of multiplier

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

乗数理論
じょうすうりろん
theory of multiplier

一定期間のマクロ変数の増加分が,どれだけの国民所得増加を生み出すかという経済理論。乗数とは一つのマクロ変数の変化がその変数を成分とする他のマクロ変数に及ぼす限界的な効果をさす。最初に乗数理論を確立したのは R.F.カーンである。

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知恵蔵2015の解説

乗数理論

経済全体の投資需要が1兆円増えたとすると、この1兆円はどこかの企業に対する需要となり、さらに最終的にはその企業の社員たちの所得になる。その企業の社員たちが、この新たな所得1兆円のうち一定割合、例えばc(0〈c〈1)の割合だけを消費するとすると、このc兆円はまた別の企業に対する需要となり、さらに最終的にはこの別の企業の社員たちの所得になる。このプロセスは無限に続くから、最終的に当初の1兆円の需要増は、1+c+c^2+c^3+…=1/(1‐c)となるが、1‐cは1より小さいので、結局もとの1兆円の需要増の数倍の需要が最終的に経済内に作り出されることになる。例えば、消費性向cが0.8であったとすれば、1/(1‐c)は5になるため、1兆円の当初の需要増は最終的に経済内に5兆円の需要を作り出すことになる。このプロセスのことを乗数効果といい、この理論のことを乗数理論という。

(荒川章義 九州大学助教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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百科事典マイペディアの解説

乗数理論【じょうすうりろん】

投資の増加が国民所得を結局どれだけ増加させるかに関する経済理論。1930年代以後ケインズ経済学とともに発展した。国民所得(支出国民所得)は消費と投資からなるが,たとえば所得の増分のうち消費支出される割合(限界消費性向)が8割であるとすると,投資が増加するとその分だけ国民所得がふえるだけでなく,その国民所得の増分の8割が消費支出され再び国民所得をふやす。
→関連項目貯蓄投資の所得決定理論

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世界大百科事典 第2版の解説

じょうすうりろん【乗数理論 theory of multiplier】

1930年以降に展開されたケインズ経済学の中核をなす理論の一つ。とりあげている問題は,独立支出(とくに投資)の増加が,国民所得の均衡水準をどれだけ上昇させるかという点である。結論を先に述べれば次のようになる。(1)独立支出は所得水準の大きさやその変化に依存しない支出であるが(その代表的なものとして公共投資のための支出などがあげられる),その水準の増加はなされた独立支出と同額ではなく,その〈数倍〉の所得の増加をもたらすということ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

乗数理論
じょうすうりろん
theory of multiplier

ある一定量の投資の増加がどれくらいの所得の増加をもたらすかを明らかにする理論。国民所得決定理論における重要な理論であり、ケインズ経済学の中核をなす理論の一つである。
 国民所得決定理論では、所得Yは、
  YCI
を満たすように決定される。ここでCは消費支出、Iは投資支出であり、また政府部門と外国部門は考慮していない。消費関数は
  CcYb c, b>0
と、所得の一次式で示されるとする。正の定数cは限界消費性向であり、その値は1より小さい。投資は所得に依存しない一定値であるとする。乗数理論は、このように外生的に決定される投資が増えると、それに応じて所得がどれほど増えるかを明確にするものである。たとえば投資がI0からI1へと増加したとする。投資がI0であるときの均衡点は、ではE0と示されており、所得はY0に決定される。投資がI1へと増えたとする。新しい均衡点は点E1になり、所得はY1の大きさに決定される。つまり、投資がΔII1I0だけ増えた結果、所得はΔYY1Y0だけ増えたのである。この所得の増加分の投資の増加分に対する比率、つまりΔY/ΔIの値を乗数という。この乗数の大きさを求めてみよう。の三角形E0E1Aは45度の三角定規の形をしている。したがって辺E0Aと辺E1Aの長さは等しくなる。辺E0Aは所得の増加ΔYを示す。辺E1Bは投資の増加ΔIに等しい。三角形E0ABに注意すると、角BE0Aの角度は限界消費性向cに等しいので、結局、辺BAの長さはcΔYになる。したがってE0AE1Aより、
  ΔYcΔYΔI

を示すことができる。つまり乗数の大きさは、1から限界消費性向を差し引いて残る値の逆数となる。1から限界消費性向を差し引いた値は限界貯蓄性向とよばれるので、乗数の大きさは限界貯蓄性向の逆数に等しくなる。限界消費性向と限界貯蓄性向の値はそれぞれ1より小さいので、乗数の値は1より大きくなる。つまり投資が増える以上に所得は増えるのである。また人々の消費意欲(貯蓄意欲)が増して(減じて)限界消費性向(限界貯蓄性向)の値が大きく(小さく)なれば、乗数の値は大きくなる。たとえば限界消費性向が0.75から0.8になると、乗数は4から5へと増える。したがってこのような状態では、投資の増加はより大きな所得の増加をもたらす。つまり消費意欲の増大は善、貯蓄意欲の増大は悪となるわけである。ケインズ以前では、貯蓄意欲の増大、つまり倹約は美徳と信じられていたが、ケインズは消費こそは美徳であると主張したのである。このような考え方は「倹約のパラドックス」とよばれる。乗数の値を正確に推定することは、政府が実行する総需要管理政策の有効性にとってたいせつなこととなる。政府支出のうち公共投資を増加させる政策がとられるときに、乗数の値いかんにより、公共投資により誘発される所得の増え方が異なってくるからである。
 これまでみてきたのは投資乗数についてであるが、このほかにもいろいろな乗数がある。たとえば、政府支出の増加がどれくらいの所得の増加をもたらすかを示すのが政府支出乗数であり、輸出の増加はどれくらいの所得の増加をもたらすかをみるのが輸出乗数である。
 また乗数理論は、景気循環を説明するために、加速度原理と組み合わせて用いられている。[内島敏之]

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世界大百科事典内の乗数理論の言及

【雇用・利子および貨幣の一般理論】より

…31年,ケインズの小冊子〈ロイド・ジョージはそれをなしうるか〉に触発され,R.F.カーンは,政府が公共投資を行って一定数の人を雇用すると,その人の収入が支出され,それが生産を高めて,さらに雇用を増大するというようにして,政府が最初に雇用した数倍の雇用が生ずるという〈乗数の理論〉を展開した。この乗数理論は失業対策としての公共投資に理論的根拠を与えることになった。同時に,これはまた《貨幣論》(1933)の出版後,同書に対して加えられた批判に答える必要を感じていたケインズに新著を書く契機を提供することになった。…

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