日本大百科全書(ニッポニカ) 「資金会計」の意味・わかりやすい解説
資金会計
しきんかいけい
fund accounting
企業活動による資金の変動に関する情報を扱う会計領域。会計制度上、資金情報は、キャッシュ・フロー計算書により開示される。それは、貸借対照表、損益計算書と並び財務諸表の体系をなす重要な財務表である。それゆえ、それら三つをあわせて「財務三表」とよんだりする。
資金の概念は、総資産概念、運転資本概念などのように資金会計の制度的変遷にしたがい変化しているが、現在では、現金および現金等価物(おおむね3か月以内に現金化できる預金等のこと)を資金の概念としている。
そして、キャッシュ・フロー計算書の作成方法には、営業活動によるキャッシュ・フローの区分に関して間接法と直接法の二つがある。前者の方法は、損益計算書の税引前当期純利益を計算のスタートとし、それに費用および収益のうち、現金の流出入を伴っていない減価償却や貸倒引当金などの調整項目、貸借対照表項目のうち、損益計算書の損益にはまったく影響を与えないが、その増減がキャッシュ(資金)の残高に影響を与える売掛金や買掛金、棚卸資産などの増減を加減して、営業活動によるキャッシュ・フローを表示する。この方法は、その作成が簡便である点、損益計算書との関係が計算上明確になる点が利点とされる。また、短所としては、キャッシュの増減に係る取引の情報を直接的に知ることができない点が指摘される。
後者の直接法は、営業活動に係るキャッシュ・フローが増減する取引ごとに、キャッシュの流入と流出を個々に表示する方法である。間接法と異なり、損益計算書との関係性は数値上示されない。キャッシュの増減を伴う取引にどのようなものがあるかが明確で、開示される情報が直接的でわかりやすいという点が利点として指摘されるが、必要以上に企業外部にキャッシュに係る情報が開示されてしまうという危惧(きぐ)や、作成上の煩雑さのデメリットを指摘するむきもある。
[近田典行]