貸倒引当金(読み)カシダオレヒキアテキン(英語表記)allowance for doubtful accounts

デジタル大辞泉 「貸倒引当金」の意味・読み・例文・類語

かしだおれ‐ひきあてきん〔かしだふれ‐〕【貸(し)倒(れ)引当金】

簿記で、決算日現在の実際残高を正しく示すため、将来発生すると予想される売掛金貸付金などの貸し倒れに備えて控除項目として計上される引当金

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「貸倒引当金」の意味・読み・例文・類語

かしだおれ‐ひきあてきん かしだふれ‥【貸倒引当金】

〘名〙 売掛金、貸付金などの債権が、将来回収不能になる場合に備えて、決算時にその金額を見積もって積み立てておく準備額。貸倒れ準備金。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「貸倒引当金」の意味・わかりやすい解説

貸倒引当金
かしだおれひきあてきん
allowance for doubtful accounts

債権に対する回収不能見込額を表すために設定され、債権勘定に対してマイナス要因として作用する勘定科目受取手形、売掛金、貸付金などの債権は、会計年度末の債権が全額次期以降に回収されるとは限らない。回収不能が見込まれる金額は、これを控除して、実質的な回収額を算定することが必要となる。金融商品会計基準においては、債権の貸借対照表価額は、取得価額から貸倒見積額に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額とするとされている。この場合、債権額から直接減額すると、もとの約定額が不明となることから、債権額をそのままとし、これに対しマイナス要因として作用する貸倒引当金勘定を設け、両者の比較から実質的回収額がわかるようにする。すなわち、間接控除である。なお、貸借対照表上は、貸倒引当金を明示する間接控除法のほか、直接控除による債権額の表示も認められる。

 金融商品会計基準では、債務者の財政状態および経営成績等に応じて、債権を以下のように区分して貸倒引当金を設定する。

〔1〕一般債権 経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権。債権全体または同種同類の債権ごとに、過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する。

〔2〕貸倒懸念債権 経営破綻(はたん)の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか、または生じる可能性の高い債務者に対する債権。債権の状況に応じて、下記のいずれかの方法によって貸倒見積高を算定する。

(a)債権額から担保の処分見込額および保証による回収見込額を減額し、その残額について貸倒見積高を算定する。

(b)債権の元本の回収等について、キャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権については、その回収等の金額の現在価値額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする。

〔3〕破産更生債権等 経営破綻または実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権。債権額から担保の処分見込額および保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする。

[宮崎 徹・中村義人 2022年11月17日]

『EY新日本有限責任監査法人編『こんなときどうする? 引当金の会計実務』第2版(2019・中央経済社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ASCII.jpデジタル用語辞典 「貸倒引当金」の解説

貸倒引当金

売掛金や貸付金など、債権回収が不能になった場合に備え、各期の利益から債権の額に応じて積み立てておく金額のこと。債権のリスクに応じて適度な比率で引当金をあらかじめ積んでおけば、いざ回収不能となった場合、大きな損失を被るリスクを回避できる。近年金融機関の融資先資金の回収ができない、いわゆる不良債権問題が表面化。銀行などは、融資先企業の返済能力を独自に判断し、回収できない可能性に備えて貸倒引当金を大幅に積み増す例が相次いだ。貸倒引当金には、個別貸倒引当金と一般貸倒引当金の2種類がある。

出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報

株式公開用語辞典 「貸倒引当金」の解説

貸倒引当金

貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)とは、銀行などの金融機関が、融資先企業の融資資金の返済能力を判断し、融資資金を回収できない可能性に備えて、あらかじめ計上する引当金のことをいう。銀行の債権は、破綻先、実質破綻先、破綻懸念先、要注意先、正常先に分類される。貸倒引当金には、個別貸倒引当金と一般貸倒引当金がある。

出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報

会計用語キーワード辞典 「貸倒引当金」の解説

貸倒引当金

貸倒引当金とは、借金の貸倒損失に備えて貯めておくお金のこと。借金から控除する形で表示されるため、評価性引当金とも言われる。

出典 (株)シクミカ:運営「会計用語キーワード辞典」会計用語キーワード辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の貸倒引当金の言及

【引当金】より


[分類]
 現行の会計諸則が規定する引当金は多様であるが,これを貸借対照表上に記載する場合の方法の違いによって大別すれば,資産の控除項目として計上される引当金(評価性引当金)と,負債項目として計上される引当金(負債性引当金)に分けることができる。(1)評価性引当金の代表例は貸倒引当金である。それは,金銭債権(受取手形や売掛金などの売掛債権と,貸付金などの融資額との双方が含まれる)について,経験率などによって予想した取立て不能の見込額である。…

※「貸倒引当金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android