現在、日本の会計制度もしくは会計基準は、貸借対照表と損益計算書にキャッシュ・フロー計算書を加えた三つを、企業が定期的に開示しなければならない財務諸表としている。この意味のキャッシュ・フロー計算書とは、一会計期間の現金収支すなわちキャッシュ・フローの状況を、一定の活動区分別(営業活動、投資活動、財務活動)に計算・表示するものである。この計算書におけるキャッシュ・フローとは、現金および現金同等物の収支をいうものとされており、現金には硬貨・紙幣ばかりでなく郵便為替(ゆうびんかわせ)証書、当座小切手、送金小切手など要求すればすぐに現金に変換できるものを含み、現金同等物とは期間が3か月以内の定期預金、譲渡性預金、コマーシャルペーパー、公社債投資信託などをいうものとしている。
一般にいうキャッシュ・フロー計算書には、個別キャッシュ・フロー計算書と連結キャッシュ・フロー計算書とがあるが、1999年(平成11)に実施された会計制度の大改革(俗に会計ビッグバンという)において、連結財務諸表が基本財務諸表となってから、このキャッシュ・フロー計算書も、通常は、企業集団すなわち連結グループ全体のキャッシュ・フローの変動状況を計算・表示する連結キャッシュ・フロー計算書をいうものと理解されている。
連結キャッシュ・フロー計算書の作成は、1998年3月に企業会計審議会から示された「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書」とともに公表された「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準・同注解」に依(よ)る。この作成基準によれば、その表示方法は、(1)営業活動によるキャッシュ・フロー、(2)投資活動によるキャッシュ・フロー、(3)財務活動によるキャッシュ・フローの3区分に分けて記載し、最後に「現金及び現金同等物」の当該期間の増減額に期首残高を加算し期末残高を表示する方式を採用している。
なお、営業活動によるキャッシュ・フローは、直接法と間接法のいずれの方式も容認されている。直接法は、主要な収入総額と支出総額を項目別に差し引き表示するもので、間接法とは、純利益をベースに当該期間の現金収支を伴わない損益(たとえば減価償却費など)を加減して表示するものである。
このようなキャッシュ・フロー計算書は、伝統的に財務管理の用具として活用されてきた資金計算書もしくは資金運用表を原点とするものであり、近年、損益計算において利益を計上していながら資金繰りの困難さから倒産するケース(いわゆる黒字倒産)の増大を重視し、この現金収支の状況を厳しく把握するために導入されたものと理解されている。
[東海幹夫]
『鎌田信夫著『キャッシュ・フロー会計の原理』新版第2版(2006・税務経理協会)』▽『伊藤邦雄責任編集『キャッシュ・フロー会計と企業評価』第2版(2006・中央経済社)』
(小山明宏 学習院大学教授 / 2007年)
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