赤痢アメーバ(読み)せきりあめーば

日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤痢アメーバ」の意味・わかりやすい解説

赤痢アメーバ
せきりあめーば
[学] Entamoeba histolytica

アメーバ赤痢アメーバ性肝膿瘍(のうよう)の原因となる原虫で、原生動物の根足虫類に属し、世界に広く分布する。とくに熱帯地域で赤痢症状を呈する患者が多い。発育形態として、栄養型、プレシスト(前嚢(のう)期)、シスト(嚢子)、メタシスト(後嚢期)の四型に分けられる。栄養型は直径20~30マイクロメートルで、新鮮標本ではそのアメーバ運動は活発である。この時期は活動状態にあり、主としてヒトの小腸下部、大腸全般にわたる組織で生活している。シスト型で経口的に摂取されて感染し、小腸下部に達して脱シストし、大腸に移動して栄養型となり、大腸粘膜内で増殖する。その一部は腸管腔(くう)でも増殖を続け、腸内容の固形化に伴いシストとなって糞便(ふんべん)とともに排出され、新しい感染源となる。

[松本慶蔵・山本真志]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「赤痢アメーバ」の意味・わかりやすい解説

赤痢アメーバ
せきりアメーバ
Entamoeba histolytica

アメーバ赤痢あるいはアメーバ性肝膿瘍の病原体。人体寄生性のアメーバのなかで最も病原性の強いもので,大腸壁に侵入して潰瘍を形成するという特徴がある。全世界に広く分布し,特に熱帯地方に多い。栄養型は主として下痢便中に排泄され,15~30μmの大きさで,内質と外質との区別が明瞭であるが,生鮮標本では核は認められない。内質にはしばしば赤血球が捕食されている。嚢子 (シスト) は主として有形便に認められ,大きさは5~15μmで,1個の核をもつが,やがて核分裂が起り,4個の核をもつ成熟嚢子となる。ヒトへの感染は,この成熟嚢子が飲料水や野菜に付着して経口感染する。

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