質物となっている人や,年季に売られた人を,対価を支払って請け戻すこと。中世・近世前半には,子女などを質に置いて借金することや年季売あるいは本金(銭)返(買戻し特約付売買)などが行われていた。この場合に,質置主や売主が本金(すなわち身代金)等を支払って,身柄を請け出すことを身請といった。人の質置や年季売はしだいに年季奉公に移行したが,遊女や飯盛女などの年季奉公契約は人身売買の実質をとどめており,これらの奉公人請状には〈この者,身請なされたく申す仁(じん)これあり候はば,御礼金何程お取りなされ,何方へなりとも,年季の外末々に至るまでお出し下さるべく候,本人出世の儀に候えば,けっして申しぶんこれ無く候〉というような身請承諾文言が記載されるのがふつうであった。その内容は,第三者である客に妻や妾として転売することを承認するものにほかならない。〈落籍(らくせき)〉ともいわれる。
執筆者:牧 英正 身請はまた,芸娼妓(げいしようぎ)を落籍させることをいい,根引(ねびき)ともいう。一般に江戸時代の身売的年季奉公人は身代金を返済することにより奉公契約を解除することができ,これを身請と称した。質物を請け戻すという意味である。芸娼妓の場合もこれに準じたが,身代金(前借金)のほかに強制的借金や年季の残余期間中の推定収入を加算されたり,朋輩(ほうばい)や揚屋(あげや),芸人らへの落籍祝儀などを必要としたので,三都遊女の身請には1000両くらいかかったという。しかし保証人が請け戻す場合は身請金も少なく,祝儀も不要であった。これを身抜け(または親元身請)といい,失費をまぬがれるためにこの形式を用いる客もあった。身請された遊女は再勤を禁じ,もし身請人が離別する際には以後の生活を保証する旨の身請証文を抱主(かかえぬし)に提出することもあった。明治以後は身請金の計算に貸借元簿を用い,落籍祝いに多額の費用を使う例はしだいに減少した。
執筆者:原島 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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