軍用爆薬(読み)ぐんようばくやく

改訂新版 世界大百科事典 「軍用爆薬」の意味・わかりやすい解説

軍用爆薬 (ぐんようばくやく)

軍事目的に主として使用される爆薬high explosiveで,砲弾,爆弾,魚雷,ロケットの弾頭,核兵器などに充てんして用いられる。その性能としては,単位容積または単位重量当り大きな威力があること,爆ごう(轟)速度が大きいこと,貯蔵安定性が良いこと,打撃に対する感度が低いこと,などが要求される。

 代表的な軍用爆薬としては,ピクリン酸,ピクリン酸アンモニウム(エクスプローシブD),トリニトロトルエンTNT),ペントリットPETN),テトリルヘキソーゲンRDX),オクトーゲンHMX)およびこれらを組み合わせて混合したものなどがある。ピクリン酸は日本では下瀬火薬として知られ,日清,日露の戦争で使われた爆薬だが,現在では使われていない。またテトリルもあまり使われなくなってきた。比較的近年知られるようになった爆薬としては,ヘキサニトロスチルベン(HNS),2,4,8,10-テトラニトロ-5H-ベンゾトリアゾロ-[2,1-a]-ベンゾトリアゾール-6-イウム(TACOT),トリアミノトリニトロベンゼン(TATB)などがある。いずれも耐熱性の高い爆発性化合物である。以上は単一の化合物からなる化合爆薬であるが,混合することによって目的の性能を与えた混合爆薬も存在する。代表的な軍用混合爆薬としては,コンポジションB(Comp B。RDXとTNTとの混合物),オクトール(HMXとTNTとの混合物),プラスチック結合爆薬PBXシリーズ(RDX,HMX,TATBなどの高性能爆薬とプラスチックとの混合物),混合爆薬LXシリーズ,混合液体爆薬などがある。

 コンポジションBは炸薬その他によく使われ,オクトールはコンポジションBより高威力を要するところで使われる。PBXシリーズの爆薬は伝爆薬および核兵器の構成爆薬として使われる。従来の軍用爆薬は次の三つの目的に使われた。(1)容器を破裂させて,その破片によって敵の人員を殺傷する。(2)爆発の爆風によって敵の建物や装置を破壊する。(3)装甲車のような標的に孔をあける。それらの目的に適するような性質の爆薬と砲弾等の形状が選ばれている。
火薬 →弾薬 →爆薬
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「軍用爆薬」の意味・わかりやすい解説

軍用爆薬
ぐんようばくやく
military explosive

火薬類のうち主として軍事目的に使われる爆薬をさす。砲弾、爆弾、魚雷、機雷、ロケットの弾頭、核兵器などに充填(じゅうてん)して用いられている。その性能としては、単位容積または単位重量当り大きな爆発威力があること、爆轟(ばくごう)速度が大きいこと、貯蔵安定性がよいこと、打撃に対する感度が低いことなどが要求される。代表的な軍用化合爆薬には、ピクリン酸(下瀬(しもせ)火薬)、ピクリン酸アンモニウム(D爆薬explosive D)、トリニトロトルエン(TNT)、ペンスリット(PETN)、テトリル(CE)、ヘキソーゲン(RDX)、オクトーゲン(HMX)、ヘキサニトロスチルベン(HNS)、トリアミノトリニトロベンゼン(TATB)などがある。これらはいずれも単一の化合物の化合爆薬であるが、混合することによって目的の性能を与えた軍用混合爆薬も存在する。代表的な軍用混合爆薬としては、コンポジションB(RDX、TNTとワックスとの混合物)、可塑性爆薬plastic bonded explosive(PBX)のPBXシリーズ(アメリカのロス・アラモス研究所で開発された可塑性爆薬)やLXシリーズ(アメリカのローレンス・リバモア研究所で開発された可塑性爆薬)、混合液体爆薬などがある。

 従来の軍用爆薬はおもに次の三つの目的に使われ、それぞれの目的に適するような性質の爆薬と砲弾等の形状が選ばれている。(1)砲弾等を破裂させて、その破片によって敵の人員を殺傷する。(2)爆発の爆風によって敵の人員、建物や装置を破壊する。(3)成型爆薬から発生する高温高圧のメタルジェット(ノイマンジェット)によって装甲車のような標的の装甲に孔(あな)をあける。

吉田忠雄・伊達新吾]

『弾道学研究会編『火器弾薬技術ハンドブック』改訂版(2003・防衛技術協会)』

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