農業動産信用法(読み)のうぎょうどうさんしんようほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「農業動産信用法」の意味・わかりやすい解説

農業動産信用法
のうぎょうどうさんしんようほう

1930年(昭和5)以来の農村恐慌に対する政策の一つとして、信用力の低かった農業者への金融の円滑を図るため、民法の特別法として、1933年に制定された法律。昭和8年法律第30号。同法は、農業協同組合、信用組合その他同法施行令に定める法人が、農業者に対して農業経営資金貸付をしたときに、その担保として、特定動産の上に先取特権成立すること、および、一定の農業用動産を抵当権の目的にできることを認めている。その先取特権は民法の先取特権のほかにとくに認められたものであり、また、同法は日本で最初の動産抵当制度を定めたものである。なお、同法で貸付の対象となる農業者には、耕作牧畜・養蚕業者のみならず、水産動植物の採捕養殖の業者や、薪炭生産者も含まれ、第一次産業のほとんどが適用の対象となる。

[福原紀彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「農業動産信用法」の意味・わかりやすい解説

農業動産信用法
のうぎょうどうさんしんようほう

昭和8年法律 30号。農林漁業者の資金の借入れをしやすくするため,農林漁業用動産について先取特権と抵当権の成立を認める法律。この法律の目的は,信用組合その他勅令で定める法人が,農業者,漁業者,製炭業者,農事実行組合その他勅令で定める法人に対して経営資金を貸付けるとき,債権者債権元利について特定の農林漁業用動産のうえに先取特権を与え,また抵当権の設定を認めることによって農林漁業金融の円滑化をはかるにある。 47年改正を経て今日にいたる。

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世界大百科事典(旧版)内の農業動産信用法の言及

【抵当権】より

…動産の担保化は質権によるというのが民法のたてまえであるが,企業設備としての動産を,占有を移転しないで担保化する必要が,とくに不動産を所有しない中小企業者において高まり,次の各種の動産について動産抵当が認められるに至っている。まず戦前の,農業動産信用法(1933公布)による農業用動産,さらに戦後の自動車抵当法(1951公布)による自動車,航空機抵当法(1953公布)による航空機,建設機械抵当法(1954公布)による建設機械等である。また,商法上は,登記した船舶に抵当権を設定することが認められている(商法848条)。…

※「農業動産信用法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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