デジタル大辞泉
「迷える羊」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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迷える羊
迷いの多い、弱い人間のたとえ。
[使用例] 牧師さんや伝道師さえ斯ういう品行じゃア、我々信者は迷える羊が羊飼に棄てられたようなもんです[内田魯庵*社会百面相|1902]
[使用例] 防空ごうに仮小屋に、迷える羊のごとくぼうぜん自失した私ども生き残り信者は、ただ涙に時を流してなんらなすところなく[永井隆*ロザリオの鎖|1948]
[由来] 「[新約聖書]―マタイ伝・一八」に見える、イエスの話したたとえ話から。「もし一〇〇匹の羊を飼っていたとして、そのうちの一匹がいなくなったら、だれだって、残りの九九匹を放っておいてでも、いなくなった羊を探しに行くでしょう。そして、見つかったら大喜びすることでしょう。それと同じように、迷いの多い人間が一人、救われないでいることは、神の御心ではないのです」という内容。弱くて罪深い人間に対する神の深い愛を表しています。
[解説] ❶宗教に救いを求めるのは、迷いを抱いているからでしょう。迷いのない大多数の人間よりも、迷ってしまったたった一人のことを、神は気にかけてくださるというこのたとえ話は、キリスト教の門をたたく人に、自分のことを言われているような鮮やかな印象を残します。人間はみな、弱くて罪深い存在。このたとえ話を踏まえて、キリスト教では、信者のことを「羊」と表現することがあります。❷日本では、夏目漱石が小説「三四郎」で用いた、これを踏まえたと思われる「ストレイ・シープ」ということばが有名。迷ってばかりいて実行力に欠ける主人公に対して、ヒロインが投げかける謎めいたことばです。
〔異形〕迷える子羊。
〔英語〕a stray sheep
出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の迷える羊の言及
【善き羊飼い】より
…初期キリスト教時代をすぎると,キリストの象徴的表現としてのこのような羊飼い像はあまり描かれなくなる。一方,迷える(小)羊lost sheep,stray sheepを連れ帰る羊飼い(《ルカによる福音書》15:3~7)など新約聖書のたとえ話の場面が,中世を通して写本画などに描かれた(《サント・シャペルの福音書》,13世紀)。この場合は一般的なキリストの容貌,服装で表されることが多い。…
※「迷える羊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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