三角関数の逆関数の総称。三角関数は、たとえばy=sinxにおいてsin30゜, sin45゜, sin60゜,…のようにxの変化に伴うyの値を求めることになるが、逆三角関数は、この逆にsinx=aにおいてaの値が1/2, 1/, /2……と変化するときのxの値(角)を求める。三角関数の正弦、余弦、正接のそれぞれに対応する逆三角関数があるが、ここでは、逆正弦関数、逆余弦関数、逆正接関数の三つについて考えることにする。なお、逆三角関数の考察が重要となるのは、微分積分法においてであるので、その意味で角は弧度法(ラジアン)を用いる。
(1)逆正弦関数 sinxは-1から1までの間の値をとる。逆関数を考える場合は、この関数が1対1であるような範囲に制限して定義域をとらねばならない。そのための区間として
-π/2≦x≦π/2
をとる。この区間内でsinxは-1から1まで増加する。したがって、-1≦b≦1を満たすbに対して、b=sinaを満たすようなaがただ一つ定まる。これをbに対応させることによって、逆関数a=sin-1b(sin-1bは、インバース・サインbと読む)が定まる。y=sin-1xのグラフはy=sinxのグラフを直線y=xに関して対称に折り返したものである( )。y=sin-1xは-1≦x≦1において定義された-π/2からπ/2まで増加する連続関数である。それは微分可能で、導関数は、
である。b=sinxを満たす一般のxの値は
x=nπ+(-1)nsin-1b
(n=0,±1,±2,……)
で与えられる。
(2)逆余弦関数 cosxの定義域を0≦x≦πで考えると、この関数はこの区間内で1から-1まで減少する。したがって-1≦x≦1を定義域とする逆関数y=cos-1xが得られる。y=cos-1xは-1≦x≦1において定義されたπから0まで減少する連続関数である( )。それは微分可能で、導関数は
である。b=cosxを満たす一般のxの値は
x=2nπ±cos-1b
(n=0,±1,±2,……)
で与えられる。また、sin-1x+cos-1x=π/2である。
(3)逆正接関数 tanxは-π/2<x<π/2においてすべての実数値をとる増加関数である。ゆえに、逆関数y=tan-1xは、すべての実数値に対して定義された-π/2からπ/2まで増加する連続関数である( )。それは微分可能で、導関数はy′=1/(1+x2)である。b=tanxを満たす一般のxの値は、
x=nπ+tan-1b (n=0,±1,±2,……)
で与えられる。
[竹之内脩]
正弦関数y=sin xの値域は区間[-1,1]である。この区間に属する任意のyに対してsin x=yとなるxは無数にあるが,xの変域を[-π/2,π/2]に制限すると,このようなxはただ一つ定まる。このとき,
x=Arcsin y,またはx=Sin⁻1y
と書き,この関数y→xを逆正弦関数という。すなわちx=Arcsin yは,-π/2≦x≦π/2を定義域とする正弦関数y=sin xの逆関数である。同様にして,0≦x≦πを定義域とする余弦関数y=cos xの逆関数を,
x=Arccos y,またはx=Cos⁻1y
と書き逆余弦関数という。また,-π/2<x<π/2を定義域とする正接関数y=tan xの逆関数を,逆正接関数と呼んで,
x=Arctan y,またはx=Tan⁻1y
と書き,0<x<πを定義域とする余接関数y=cot xの逆関数を,逆余接関数と呼んで,
x=Arccot y,またはx=Cot⁻1y
と書く。sec x,cosec xの逆関数も同様にして定義されるが,これらはたいして有用でない。以上に述べた6個の三角関数の逆関数を総称して逆三角関数という。
正弦関数y=sin xの定義域を制限しない場合は,その逆関数を考えると多価関数になる。それを逆正弦関数と呼んで,
x=arcsin y,またはx=sin⁻1y
と書くこともある。この場合には,前に述べたArcsin yを逆正弦関数の主値という。逆余弦関数arctan y(cos⁻1y),逆正接関数arctan y(tan⁻1y)など,およびそれらの主値という言葉も,同様に定義される。逆三角関数という名称は,これらの多価関数を指すこともある(図)。
以上の記述においては,三角関数の逆関数として説明したため,逆三角関数の独立変数をyで表したが,最初から逆三角関数を扱うときにはもちろん独立変数をxと書いてよい。例えば逆正弦関数はy=arcsin x,またはsin⁻1x(主値ならばArcsin x,Sin⁻1x)のように書く。逆余弦関数,逆正接関数についても同様である。逆三角関数(主値)の微分法については,次の公式が成り立つ。
執筆者:伊藤 清三
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